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東京慈恵医科大学同窓会

最新情報


2017年10月25日 第71回定期支部長会議における大学の事業報告
学校法人慈恵大学 理事長 栗原 敏
東京慈恵会医科大学 学長 松藤 千弥


 同窓会支部長、並びに学術連絡委員の皆様には、日頃、大学運営に対するご理解とご協力を賜り感謝いたします。大学全体に関する事項は理事長が、教育・研究に関する事項は学長が、附属病院に関する事項は井田博幸副院長がご報告します。
理事長報告
[大学全体に関する事項]
1.平成28年度決算報告
 事業収入は1,013.3億円で、前期比プラス14.3億円であったが、予算をわずかに達成できなかった。事業支出は963.1億円で前期比プラス17.8億円と増加したが、予算比マイナス11.4億円となった。収支差額は50.2億円であり、前期比マイナス3.5億円、予算比プラス4.1億円となり、増収、増益となった。医療収入は伸び悩み、908.5億円で前期比プラス14.6億円と増加したが、予算比ではマイナス7.0億円であった。医療経費は332.3億円と前期比で10.9億円増加したが、医療収支としては576.2億円で前期比プラス3.7億円、予算比マイナス14.3億円となった。経費が削減されたので、収支差額としては予算を達成することになった。本院は予算未達であるが、外来患者数、新患数、入院患者数、手術件数などが、前年同期比で改善傾向にあり、予算達成率も向上している。葛飾医療センターと柏病院の医業は堅調であり、本院の不足分を補完している。

2.経費削減の取組み
 大学全体として経費削減に取り組んでいる。コストマネージメント・プロジェクトを立ち上げ、成果が出つつある。四附属病院を対象に物品物流管理システム(SPD)を一元化して、医療機器・医療材料などの購入の効率化を一層図ることになった。

3.西新橋キャンパス再整備計画
 西新橋キャンパス再整備計画は予定通り進捗しており、新大学2号館(仮称)は6月30日に竣工し、今後、2号館と呼称される。7,8月で大学2号館の臨床講座、理事室、会議室が2号館に引っ越した。2号館の2階には災害時に被災者を収容するための講堂が設けられ、平時には式典、集会などに使われる。3階には理事室と教授会や理事会などのための会議室がある。他の階層の会議室を含めると2号館内には26会議室があり利便性が向上した。4階の一部と5階には臨床ラボがあり、臨床講座の研究が行われる。
 2号館に隣接して建てられる新病院(小児周産期センター)(仮称)の建築は順調に進捗しており、来年10月に竣工予定である。また、当面、継続して使用するF棟の耐震補強工事は近々、終了する。大学本館の取り壊し前に、中央講堂お別れ会を7月1日に行い、栗原理事長が今日に至る本学の歴史について講演した。その後、2号館に場所を移して懇親会を開催した。9月1日には、大学本館と大学2号館解体の安全を祈念して、安全祈願祭が愛宕神社神職を迎えて執り行われた。

4.創立130年記念事業募金について
 皆様のご協力によって、創立130年記念事業募金は目標額の約78%に達した。平成30年9月30日まで継続されるが、目標額(20億円)達成を目指してご協力をお願いしたい。

5.その他
 TV東京の番組で本学の品位を汚すような放映があったので、TV局と制作会社に対して弁護士をとおして抗議し謝罪を求めている。今後、マスコミ取材に関する学内規則をより厳格に整備して再発防止に努めたい。

「病院長報告」(丸毛啓史病院長に代わり井田博幸副院長から報告)
 初めに、本院で肺がんが疑われるCT画像情報が、医師間で共有されず見過ごされ、その結果、1年後に肺がんで亡くなられた患者さんの事例を重く受け止め、外部委員主導の“診療情報共有改善検討委員会”を立ち上げ、答申が6月30日に理事長あてに提出された。それを受けて、記者会見し、改善策の実施に向けて学内調整を行っている。
 本院の医療収入は予算未達の厳しい状況が続いているが、今年の1月から外来患者数、初診患者数、手術件数などが回復傾向にあり、今後、患者紹介率と逆紹介率を一層改善していく。特に、紹介元への返書を必ず書くように指導している。
 医療安全、感染対策、法令遵守に加えて丸毛病院長は医療者のマナーを重視し、エチケット・ベースド・メディスンに取り組んでおり、挨拶の励行、服装、患者さんに対する態度の指導を行っている。スマイルカウンターの改善、初診受付コーディネーターの配置などによって、来院患者に対するサービスを改善している。また、20,21階病棟を改装してコンシェルジェを配置するなど、一層、患者中心の医療の実践に努めている。
 本院では、関連している診療部が協力して患者さんを診る“緩やかなセンター化構想”を推進しており、脳卒中センター、脊椎・脊髄センター、乳腺・内分泌センターを開設した。1人の患者さんを集学的に診ることによってより質の高い診療体制を構築する。また、急性大動脈スーパーネットワークへも参画している。
 医師の採用時、特に研修医の採用時に、医師としての資質・態度評価を重視して、採用時の面接を厳格化することにした。
 本院では来年1月から電子カルテが導入されるので、現在、導入に向けて準備している。また、それに伴い診察カードが変わるので、滞りなく新カードへの切り替えができるような対応を考えている。
 増患対策として、学内の教職員を対象に、医療連携フォーラムを開催し、各診療部が得意とする診療内容について説明し、教職員からの患者紹介を推進している。また、本学出身の産業医が多いことから、産業医、医師、保健師、看護師を対象に“働く人の健康支援研究会”を開催し、毎回、300名程の参加者があり好評である。
 第3病院では、Empathy-based Medicine(EBM)に取り組んでおり、地域中核病院として患者さんからの信頼獲得に努めている。葛飾医療センター、柏病院の医業は順調で、地域中核病院として、それぞれの地域で中心的役割を果たしている。
学長報告
[教育・研究に関する事項]
 グローバルな知識基盤社会の到来を迎える中、日本の最大の資源は人材であるという考えに基づいて、人材育成と知的創造の中心である大学に向けられる期待と要請は年々大きくなっている。日本の大学がどんな役割を期待されているか、それに対して本学はどのように応えていくのかという観点からご報告したい。
1.大学の理念に基づいた特色ある教育
 教職員・学生に建学の精神が浸透している本学としては自信を持てる分野である。今後は大学の理念や特色をわかりやすく社会に発信していく必要があり、大学のブランド戦略と結びつけた広報活動を計画中である。
2.能動学習と課題解決能力の涵養
 予測困難な未来で活躍できる人材にとって重要なのは、自ら課題を見つけ、それを解決していく能力である。医学科・看護学科とも、現在導入中の新カリキュラムにおける重点項目としている。
3.社会・地域・産業との連携
 これまで本学の社会・地域連携は附属病院を通じた医療活動が主だったが、社会や地域の知の中心としての大学の役割も期待が高まっている。本学では、市民公開講座などに加え、学生も文化祭などを通じて地域とのつながりを深めている。特に看護学科では、地域連携能力の強化が新カリキュラムを柱のひとつとしている。また産学連携を推進するためには大学の研究力を高める必要があり、さまざまな研究振興策を実施しつつある。
4.国際化の推進
 国際コミュニケーション能力や異文化理解の涵養に加え、医学・医療分野では国境をまたぐ人材の流動化に伴って教育の質保証が求められている。本学の医学教育は、国際基準に基づく外部評価をクリアし、認証を受けている。また、海外の学生や共同研究者は、大学の国際性を種々の世界大学ランキングによって判断するという状況がある。本学は2018年版タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの世界大学ランキングで801〜1000位にランクされているが、研究力や論文による研究成果の発進力を強化することにより、国際性をさらに高めたい。
5.入学者選抜の適正化
 高大接続の適正化の観点から中学・高校における教育が見直され、大学の入学者選抜もそれに対応していく必要がある。本学医学科では、受験生の人間性や適性をより重視した選抜を行うため、今年度(平成29年春)から面接方式の改良や小論文の復活などの入試改革を行った。地方からの入学者が減少し、学生の多様性が縮小している現状への対策も検討している。
6.医学の専門化・細分化と総合診療能力育成の両立化
 特に医学教育における問題として、急速な医学の進歩に伴う先端化・細分化が進行する一方で、少子高齢化や人口偏在問題に対応するために高い総合診療能力を持つ医師をより多く育成しなければならないという、相反する動きへの対応があげられる。これを本学の医学教育にいかに反映させるかが、今後の重要課題になるであろう。

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