社団法人東京慈恵会医科大学 同窓会

 
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2017年10月25日 大学講座シリーズ19 「外科学講座 上部消化管外科 」
特任教授 三森 教雄


【上部消化管外科(胃)】
診    療    
 慈恵医大上部消化管外科の沿革を振り返るにあたり、再認識しておくべき功績の1つは、大井実教授、長尾房大教授、青木照明教授らにより確立された消化性潰瘍に関する発生要因、外科治療理論についてと思われる。1982年にそれまでにない胃酸分泌抑制薬であるH2ブロッカーの販売開始、その後のピロリ菌の発見、更に高度な酸分泌抑制薬であるPPIの登場により、消化性潰瘍の治療は、穿孔例以外手術適応になることはまれで、当院でも近年は年間5〜10例程度の消化性潰瘍手術件数にとどまっている。附属病院外科診療部は、平成29年4月より消化管外科が、上部、下部消化管外科診療部に分かれ7診療部となった。外科全体のベッド数は152床で、その内77床を消化管外科が担当している(4月より44床を上部、33床を下部で運用)。上部消化管外科の対象疾患は、食道癌、胃癌など悪性腫瘍に対する手術治療が主であるが、慈恵医大の特徴は食道良性疾患(食道アカラシア、逆流性食道炎)に対する手術症例数も多いことである(矢野文章講師担当)。
 胃悪性疾患は、胃癌と粘膜下腫瘍の形態をとる消化管間質腫瘍(GIST)が主な対象疾患である。ピロリ菌感染の減少とともに、日本人胃癌の死亡数は減少傾向にあるが、60歳以上の感染率はまだ高く、今後も胃癌発生に注意が必要である。胃癌手術症例数は、若干減少傾向にあるが、当院では年間100例前後を施行している。胃癌に対する根治療法は病巣の完全切除と転移する可能性のあるリンパ節郭清が標準であり、リンパ節転移は重要な胃癌の予後因子である。標準的な治療は、リンパ節転移をしやすい部位を含め3分の2以上の胃切除術などが適応とされている。通常行われる幽門側胃切除術、胃全摘術は根治性が高いものの胃切除後障害(ダンピング症候群、小胃症状、逆流症状など)の発生が術後のQOLに影響することがある。内視鏡的治療ESDは胃を温存できるもののリンパ節転移の可能性がある病変に対しては適応とならない。早期胃癌のリンパ節転移率は15〜20%であるため、リンパ節転移の有無を治療時に確認できれば、郭清範囲、胃切除範囲を縮小でき、胃切除後障害を減らし、縮小手術、個別化治療につながる可能性がある。センチネルリンパ節(見張り役リンパ節:sentinel node:SN)とは、癌原発巣からのリンパ流を直接受けるリンパ節と考えられている(図1)。癌の転移は最初にSNに生じるという考え方を応用したSentinel Node Navigation Surgery:SNNSは、1990年代初頭にアメリカのモートンらが皮膚腫瘍のメラノーマに臨床応用してから、乳癌を含めてこの分野では広く臨床応用され日本でも保険適応となっている。早期胃癌に対する赤外線内視鏡によるSNNSは、当診療部で2009年6月より厚生労働省より先進医療として承認された(図2)。SM浸潤胃癌は約20%にリンパ節転移を認めるため、標準治療はリンパ節郭清を伴う胃切除術であるが、SN検索で転移陰性であれば胃温存術式が可能と判断し、実施している(図3)。
 胃癌に対する腹腔鏡下手術の適応は、臨床診断T3N1までとしている。腹腔鏡下胃切除例は既に800例を超え、また技術的にもD2郭清を十分に行える状況となった。日本内視鏡外科学会技術認定医が中心となって手術を担当している。幽門側胃切除だけでなく、胃全摘術、逆流防止噴門形成を行う噴門側胃切除術も全鏡視下に安全に行えている。
 また、肥満患者に対する胃スリーブ切除を中心とした減量外科手術も平成28年度より開始し良好な結果が得られつつある。
研   究     
 早期胃癌に対する個別化治療、縮小手術として赤外線内視鏡を用いたセンチネルリンパ節検索の検討、胃癌腹膜転移および腹膜転移高危険例に対する抗癌剤の腹腔内投与療法の検討、内視鏡と腹腔鏡によるハイブリッド手術などをテーマに臨床研究を行っている。
教   育     
 手術、周術期管理など臨床面での外科診療手段については、やはり屋根瓦方式を中心に行っている。学会専門医、指導医資格はもとより、日本内視鏡外科学会技術認定資格を取得できるよう技術の伝承を続けている。
【上部消化管外科(食道良性)】
沿   革     
 大井外科、長尾外科、青木外科と続く旧第2外科時代には、消化管生理機能に関する研究が盛んであり、運動機能を中心とする運動班と酸分泌機能を中心とする分泌班が存在した。分泌班では、消化性潰瘍や胃内分泌機能の研究が主であったが、プロトンポンプ阻害薬などの強力な酸分泌抑制薬の登場やHelicobacter pylori菌の発見とともに消化性潰瘍に対する外科治療件数は激減し、研究の流れはGERDなどの酸関連疾患と食道胃接合部機能へ首座を移した。
スタッフ    
 現在、食道良性班に所属している教室員は、柏木秀幸客員教授、石橋由朗准教授、小村伸朗准教授、矢野文章講師、坪井一人講師、星野真人助教、山本世怜助教、秋元俊亮助教、増田隆洋助教の9名である。
診    療    
 診療は、主に食道裂孔ヘルニア、GERD関連疾患ならびにアカラシアを代表とする食道運動機能性疾患に対する病態評価と外科治療である。いずれの疾患に対しても、1994年より腹腔鏡下手術を早期から導入し、同分野においてはわが国のパイオニア的存在である。グラフにこれまでに日本全国で施行されたGERDおよびアカラシアに対する腹腔鏡手術件数を示した。慈恵医大(関連病院を含む)で行われた手術件数はそれぞれ全国で行われた手術件数の実に17%および28%に及んでいる。今日では、患者負担のより少ない、reduced port surgeryやneedlescopic surgeryなどの低侵襲手術を積極的に導入している。アカラシアに対しては、POEM(経口内視鏡的筋層切開術)を含め、現在日本で行われているすべての治療術式が施行可能なごく限られた施設であり、各術式のメリット・デメリットを説明したうえで、患者本人に術式選択を委ねている。そのため、紹介患者は北海道から九州にまで全国に及んでいる。
研    究    
 ラットを用いた実験的研究を多く行ってきた。とくに、小村伸朗准教授が開発した慢性逆流性食道炎モデルは全国に広く知れ渡り、これまでに多くの施設で同モデルを用いた研究が行われている。一方、2006年より米国クレイトン大学食道外科に継続的に留学し、最先端の臨床研究を行っている。現在では、増田隆洋助教が、アリゾナ州クレイトン大学フェニックスキャンパスで日々研究を重ねている。留学を既に終えたスタッフは、米国での経験を生かし、高解像度内圧検査や多チャンネル・インピーダンスpHモニタリング検査を用いた臨床研究を行い、その成果を多数の論文にまとめている。
教    育    
 食道良性疾患に対する鏡視下手術件数は日本一であり、若手教育には最適な環境である。附属病院に配属しているときに集中的に術者を担当させ、日本内視鏡外科学会の技術認定医獲得を目指し指導している。技術認定医試験は、合格率40%弱の狭き門であるが、スタッフ9人中6人がすでに合格している。学会活動に関しては屋根瓦方式を導入し、積極的に若手が後輩の面倒をみている。
【上部消化管外科(食道悪性)】
 食道癌は日本国内におけるがん死亡の7位であり、特に男性では近年緩やかな増加傾向が見られている。本邦における食道癌治療は1950年頃の放射線治療に始まり、その後の手術や抗癌剤、内視鏡治療などの進歩によって生存率も向上し、今日では世界に誇れる治療成績となっている。とくに手術治療に関しては麻酔や周術期管理の進化とともに目覚ましく発展し、手術死亡は1〜3%(欧米5%)まで低下し安全に施行できる手術となってきた。その一方で食道癌手術は頸部、胸部、腹部にまたがる高度侵襲手術であり、術後の合併症は他の癌手術より高く長期入院を余儀なくされることも稀ではない。そこで、他の外科手術同様に食道癌手術においても従来の開胸開腹手術から内視鏡外科手術への移行が進んでおり、ここ数年では慈恵医大全体で5割以上の食道癌手術が胸腔鏡を用いて施行されている。(図1参照)
診    療    
 附属病院での食道癌治療は外科学講座が統一された平成13年から、羽生信義客員教授(昭53卒、町田市民病院副院長)が責任者として統括し、その後、平成15年から鈴木裕医師(昭62卒、国際医療福祉大学病院副院長)、そして平成18年以降は西川(平2卒)に引き継がれている。食道癌患者は手術の可否関係なく基本的に外科が窓口となり腫瘍内科医、放射線治療・読影医や食道内視鏡専門医と週1回のcancer board meetingを経て治療方針を決定している。胸部食道癌手術に関しては頸部胸部腹部操作による3領域リンパ節郭清を標準術式としており、最近では術前化学療法の導入により胸腹腔鏡手術による切除可能症例が増加している。また初診時に手術適応外の高度進行癌症例でも術前化学放射線療法を導入することで手術治療が可能となりうる症例も増えてきている。手術以外の治療法に関しても患者、家族と相談しながら病状・病態に則して内視鏡治療のほか抗癌剤、放射線治療などを組み合わせて適切な治療を提供している。
教   育 
 臨床教育に関しては現在、3人の食道外科専門医が附属病院と第3病院で手術を含めた食道癌治療の教育を若手スタッフに対して行っている。また2014年から希望者に対してがん研有明病院へ国内留学として派遣し食道癌手術の研鑽を図っている。今後は食道外科専門医の有資格者を増やし、分院や関連病院で質の高い食道癌治療を行えるよう体制を整えていく方針である。
研    究    
 食道癌に関する研究は、現在は臨床研究を中心として活動を行っている。主な内容としては食道切除術後の作成胃管の血流に関する研究とhigh resolution manometryを用いた食道切除術後の嚥下、残食道機能の検討、術中反回神経刺激モニタリングによる術後反回神経麻痺の予測・予防のほか多施設共同研究にも参加し、これまで国際学会のほか外科学会、消化器外科学会などでその成果を数多く発表している。今後は腫瘍内科との合同研究や大学院進学者を輩出し基礎研究にも力をいれていきたいと考えている。
【大木隆生統括責任者の一言】
 本学外科学講座は学祖高木兼寛先生により開講された伝統講座であるが、その中興の祖は消化性潰瘍における二重規制説や迷走神経切離術などを開発しこの分野を世界的に牽引した大井実、長尾房大、青木照明各教授らであり、その成果により日本外科学会(2回)と日本消化器病学会を主宰したまばゆい実績を誇っている。しかし、画期的な薬の登場により潰瘍手術は激減し、さらに胃癌発生数も減少に転じ、取り巻く環境は変わった。本学上部消化管外科はこの環境の変化に対応し、現代のニーズに応える診療科へと変貌した。良性疾患においてはアカラシアと新たな現代病となりつつある逆流食道炎に一早く取り組み、日本のリーディング施設となった。また増加傾向の肥満症に対して厳しい施設認定基をクリアし肥満手術を保険診療で行える都内3番目の施設に認定され、極めて良好な結果を得ており誇らしい。
 胃癌では術中生検と腹腔鏡を組み合わせた過不足の無い合理的な術式を開発した。食道癌は様々な治療選択枝があるため関係科と密に連携をとりつつ、個々の患者にベストの治療を提供している。非手術治療の機会が増える中、独自の取り組みが評価され手術件数は着実に伸びている。以上の様に本学上部消化管外科は進取の気性で社会のニーズに応える診療を提供している伝統・看板診療科であるのでOB諸氏におかれては地域包括ケアシステムなどの心理的影響を乗り越えて本学の強味である母校愛に根差した紹介ネットワークを発揮して頂きたい。










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