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東京慈恵医科大学同窓会

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2017年11月25日 大学講座シリーズ? 「外科学講座 下部消化管外科 」
講 師  衛藤 謙


沿   革    
 外科学講座は、平成13年4月に大講座制が確立し、現在は呼吸器・乳腺外科、消化器外科、小児・血管外科の三分野に分けられている。病院機能ではさらに細分化され、消化器外科分野は消化管外科と肝胆膵外科の二つの診療部体制に分けられていた。消化管外科診療部は、上部グループと下部グループに分かれていたが大腸癌、炎症性腸疾患、肛門疾患などの近年の疾病に対する病態の解明や治療法の進歩に加えて、下部グループのスタッフの増加と同領域の手術数増加などの理由から(図1)、平成29年4月に上部消化管外科と下部消化管外科の二つの診療部に分けられた。そして初代下部消化管外科診療部長として衛藤謙(平4卒)が就任した。
診   療    
 下部消化管外科の診療は、おもに大腸と小腸の良・悪性疾患、および肛門疾患の治療である。患者さんに最良な治療を行っていくためには、消化器・肝臓内科、腫瘍・血液内科、内視鏡部、放射線治療部などの関係各科との、綿密な連携が重要であり、本学の強味であるチームワークを発揮し、診療部の壁をこえたチーム医療を行っている。手術は良悪性を問わず、低侵襲である腹腔鏡手術を早期から導入し、現在大腸癌の約90%が腹腔鏡手術で行われている。炎症性腸疾患についても、消化器・肝臓内科と密に連携しながら症例を増やしている。肛門疾患においては、肛門疾患専門外来を設け、痔疾患をはじめ、肛門機能障害など幅広く治療を行っている。
研   究    
 現在、遺伝子治療研究部と生化学教室に継続的に大学院生が進学し、下部消化管領域に関わる基礎研究を行っている。遺伝子治療研究部では大腸癌の放射線照射に伴う浸潤能増強に関する基礎研究を行っている。生化学教室では、大腸癌の進展・増殖に関与する細胞内シグナル分子であるDYRK2の発現解析についての研究を行なっている。
 臨床研究では、他病院との多施設共同研究を複数行っているのと同時に、慈恵医大附属四病院合同での共同研究も行っており、ビッグデータを構築することで慈恵から新しい知見を発信するために努力している。さらに、附属病院には、日本に一台しかない高精細度肛門内圧検査器(high-definition anorectal manometry : HD-ARM)を有しており、今年の四月に倫理委員会で承認され、肛門疾患および大腸手術術後の肛門機能評価を行う臨床研究を開始した。未解明だった肛門機能障害の病態を明らかにすることにより、新しい治療法の開発をし、一層患者のQOLの向上に寄与したい。
教   育    
 臨床面については、毎月手術技術向上のためのミーティングを行い、手術ビデオを使用しながら技術のボトムアップを図っている。また、研究面においては6カ月に一度、生化学教室の吉田清嗣教授、大学院生、臨床スタッフが一同に会し、リサーチミーティングを行っており、レジデントやスタッフの研究への知識や興味が深められている。
【大木隆生外科学講座統括責任者の一言】
 学祖高木兼寛先生に始まる慈恵医大外科学講座にあって下部消化管外科の歴史は驚くほど浅く、その源流は穴澤貞夫客員教授(昭42卒、前外科同門会長)が昭和47年に癌研究所附属病院(大塚)留学から帰学された時に始まる。帰学初年度に一年間で切除できた大腸癌は3例しかなかったが、穴澤客員教授とそのタスキを受けた後輩達の不断の努力と疾病構造の変化により目覚ましい発展を遂げた。現在、外科の消化器外科分野に所属している外科医は175人で内訳は上部、下部、肝胆膵外科で各々55、68、52人と下部が最多である。過去5年間の新入医局員数を見るとその勢いは更に際立ち各々10、24、7人である。
 こうした活況や本項で紹介されている臨床、研究、教育面での高いアクティビティーが評価され本年より下部消化管外科が診療科として独立したのは適切な判断であり執行部の英断にチェアマンとして感謝する。衛藤謙講師(平4卒)が初代診療部長に就任し悲願を達成した本診療科は活気があり、士気が高く、何よりも進取の気性と患者中心の医療を誇る自慢の診療科であり、患者さんと紹介医の期待にしっかり応えている。OB諸氏におかれてはどうか本診療部と衛藤部長を温かく見守り育んでほしい。

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