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東京慈恵医科大学同窓会

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2018年02月25日 退任記念講義を終えて 外科学講座・呼吸器外科、乳腺・内分泌外科 森川 利昭
演題「私が目指してきたこと」


 私は昭和52年(1977年)に国立長崎大学医学部を卒業しました。「こだわりのあるプロ」を目指して、国立長崎中央病院、国立がんセンター病院、国立療養所松戸病院、北里研究所病院、北海道恵愛会南一条病院、北海道大学腫瘍外科を経て、2005年7月、東京慈恵会医科大学外科学講座呼吸器、乳腺・内分泌分野担当教授に採用されました。私の外科医人生を変えたのは、内視鏡手術に一九九二年に出会い、その原理の優秀性に感動を覚えたことです。全く未開発であった胸腔鏡手術を、一から開拓してきました。手技の一つ一つを見直し、必要な器具を開発し、手術の基本がほぼ完成した一九九七年、突然44歳にして北海道大学に招かれました。初めて大学という組織に所属したことで、私の胸腔鏡手術は完成しました。
 慈恵医大に採用された2005年当時、内視鏡手術の安全は重要課題でした。胸腔鏡手術の優秀性を確信していた私は、就任後直ちに従来の開胸主体の呼吸器外科手術のほとんどを胸腔鏡手術に置き換えました。今回12年余りの手術成績を振り返ったところ、肺癌手術患者は以前よりリスクが高く、しかし手術件数は倍以上、そのほとんどに完全胸腔鏡手術を施行しました。出血量や合併症は半減、死亡率も半減以下、生存成績は有意に改善、という成果を得ました。今や胸腔鏡手術は安全性と信頼性の高い手術です。とはいえ安全は自ら作るもので、全力で取り組んでくれた呼吸器外科のメンバーに心から感謝しています。乳腺・内分泌外科は武山浩教授以下のメンバーのおかげで堅調な発展を遂げてきました。外科学講座は大講座であり、チェアマン大木隆生教授には終始親身に支えて頂きました。全ての慈恵大学関係者に深甚な謝意を表します。

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