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東京慈恵医科大学同窓会

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2018年02月25日 定年退任にあたって 大学直属 薄井 紀子

 昭和54年慈恵医大を卒業後、附属病院の内科研修医1年目に受け持った急性前骨髄球性白血病(APL)の患者さんは数日で十分な治療が出来ずに落命されました。その3ヵ月後に回った阿部正和先生の内科では、同じAPL患者さんが、完全寛解(CR)に導入され元気で退院される姿を目にし、白血病を治せる臨床医になりたいと強く思い、同内科に入局し、市場謙二先生、目黒定安先生、倉石安庸先生が率いる臨床血液研究室のメンバーに加えて頂きました。そして、米国の治療法を実践する癌研化学療法科に入局2年目より留学し、小川一誠先生のもとで血液がんおよび固形癌のがん化学療法について学びました。昭和63年から平成4年の4年間は、米国のNCI/NIHに留学し、リンパ腫の世界的権威であるDan Longo先生のラボで、サイトカインを含むがんの免疫化学療法のメカニズムなどをテーマに基礎研究をする傍ら、週一回の臨床カンファレンスに出席し、リンパ腫や悪性腫瘍の臨床研究について多くの事を学びました。白血病・リンパ腫を化学療法で治すためには、有効な薬剤と有用な併用療法の開発が必須であり、自施設だけでなく多施設共同で優れた臨床研究を施行することが求められます。
 帰国後は日本成人白血病共同研究グループ(代表大野竜三先生)の白血病の臨床研究に積極的に参加し、学内外の仲間たちと成績の向上を目指しました。平成6年APLに対して、平成12年慢性骨髄性白血病(CML)に、平成15年Bリンパ腫に対して開発された各種有効な分子標的薬により、白血病・リンパ腫の治療成績は改善しています。APLやCMLは内服薬で長期のCRを維持できる時代になりました。内科学第三を率いた田嶼尚子先生とLongo先生は、英語と日本語の差はあるものの同じ言葉「仕事は裏切らない。やればやるだけの結果が得られる!」で私を励まし導いて下さいました。素晴らしい先輩と向上心溢れる優れた後輩達に囲まれ、とても楽しい卒後39年の医師人生を過ごすことができました。有り難うございます。

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