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東京慈恵医科大学同窓会

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2018年03月25日 第1263回成医会例会開催
2012年ノーベル生理学・医学賞受賞
山中伸弥 京都大学iPS細胞研究所
所長/教授による講演


 平成30年2月16日(金)、第1263回成医会例会が2号館講堂で開催された。今回は、京都大学iPS細胞研究所所長/教授 山中伸弥先生による「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」と題してご講演をいただいた。
 山中先生は、大阪市立大学医学部薬理学教室助手、奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター教授を経て、平成16年に京都大学iPS細胞研究所教授として異動し、平成22年から同研究所の所長に就任した。この間、精力的にiPS細胞の開発とその臨床応用に取り組み、平成24年に「成熟細胞から多能性を持つiPS細胞へ初期化させる手法を発見」した功績が認められ、ジョン・ガートン博士とノーベル生理学・医学賞を共同受賞した。その他、ラスカー賞、恩賜賞、日本学士院賞、京都賞、文化勲章、ウルフ賞など、数々の名誉ある賞を受賞している。現在、米国グラッドストーン研究所上席研究員を兼務し、平成27年には米国医学アカデミー国際会員に選出されている。
 講演は、まず「医学へ導いてくれた恩人」の話から始まった。その恩人は、町工場を経営していた父親であり、輸血によりnon A non B型肝炎を発症したが、現在のような抗ウイルス薬(ハーボニーなど)を用いた根治治療もできないまま亡くなられた(この一年後にHCVが発見された)。この出来事は、山中先生にとって、医学研究を志し、多くの人を救いたいと考える大きな転換期となった。
 当初はRNA研究から始めたが、その後、皮膚細胞から多能性を有するiPS細胞の開発に精力を注いだ。平成十八年にマウスでiPS細胞の作製に成功し、平成19年にはヒトでもiPS細胞の作製に成功した。その成果、業績を認められ平成24年にはノーベル生理学・医学賞の受賞に輝いた。iPS細胞は、ほぼ無制限の増殖能を有し、神経細胞、心筋細胞、筋肉細胞、肝細胞など、どのような細胞にも分化、増殖することができる。平成26年には、iPS細胞から網膜細胞を作製し、加齢黄斑変性症の臨床応用に成功している。現在、?パーキンソン病、?心不全、?脊髄損傷、?血液疾患(洗浄血小板作製、血小板移植、赤血球移植など)への臨床応用を進めている。
 また、iPS細胞を利用した創薬の開発も進んでいる。現在、指定難病306疾患のうち、155疾患からiPS細胞を作製している。進行性骨化性線維異形成症(FOP)由来のiPS細胞を用いて、シグナルの特異的抑制因子を網羅的に検索し、ラパマイシンがFOPの特効薬であることを突き止めている。
 山中先生は、聴講者にこれからの医学の進むべき方向性と大きな夢を与え、講演を終了した。2号館講堂で講演会が開催されたが、1号館講堂、柏病院、葛飾医療センター、第三病院にもテレビ会議システムを用いて中継され、満員御礼のもと、盛会裏に終了した。
(成医会運営委員長 柳澤裕之記)

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