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東京慈恵医科大学同窓会

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2018年05月25日 大学講座シリーズ「生化学講座」
講座担当教授 吉田 清嗣


沿   革
 生化学講座の源流は、東京慈恵会医院医学専門学校時代の明治41年9月、東京帝国大学医科大学・医化学助教授・須藤憲三への医化学講義委嘱まで遡ります。大正2年9月11日に永山武美教員補が教授に就任し、学祖高木兼寛校長より初代講座担当を命ぜられ、講座が創設されました。その後、牧野堅、松田誠、大川清が教授を歴任し、平成24年度より吉田清嗣が講座を主宰しています。昭和37年に講座開講50年記念式典が行われ同式典において若い研究者の励みになるべく初代教授の名を冠した「永山賞」の設立が決まり、その後すぐれた業績をあげた研究者が次々と受賞しています。平成25年3月には、講座開講100周年記念祝賀会を吉田の講座担当教授就任祝賀会と併せて開催しました(写真1)。講座の研究は初代永山教授の学祖高木兼寛を源流とする水溶性ビタミン、第二代牧野教授の核酸、ATP、ビタミンB1の構造決定やトリプトファン代謝、第三代松田教授のGABAやビタミンB6の生理機能、そして第四代大川教授の発癌機構、抗癌剤耐性といった癌研究へと多彩に変遷してきました。また特筆すべき事項として第三代松田誠名誉教授は、学祖高木兼寛先生の業績を調べ執筆することに精力を尽くしています。その成果は現在までに「高木兼寛伝」「高木兼寛の医学 I〜V」「高木兼寛の医学―東京慈恵会医科大学の源流―」など多くの著書になっています。松田名誉教授の仕事によって、学祖と本学の歴史が再認識されることとなり、その貢献は計り知れません。この多大なる貢献に対し、平成22年に同窓会設立85周年記念特別表彰が贈られています。
教 室 員
 講座のメンバー(写真2)は、吉田清嗣教授、青木勝彦助教、與五沢里美助教、山田幸司助教、吉田彩舟助教、多胡直子研究補助員、当房文香研究補助員。大学院生は隈本智卓(消化器外科再派遣)、間嶋志保(消化器内科再派遣)、今泉佑太(消化器外科再派遣)。またMD-PhDコースに木澤隆介(医学科四年生)が在籍しています。
教   育
 生化学教育は医学科二年生を対象としたユニット「分子から生命へ」と看護学科二年生を対象とした「生化学」を担当しています。生化学はあらゆる臨床医学と密接に関連しており、基礎医学の根幹を成していることからコアカリキュラムを重視し、授業内容を厳選しています。また進展の著しい分野には少人数の演習によるチュートリアル教育手法を導入し、自主的な検索・学習を促す方針をとっています。これら机上の学問を実体験できる生化学実習教育も、動物を対象に遺伝子型と表現型解析のup to dateな実習プログラムを教員スタッフ全員で週を通して終日実習に専念できる日程で行っています。大学院教育では、世界に伍していけるユニークな研究の遂行を目標に、生化学・分子生物学の基礎的知識・手技と最新の知見を修養し、独自の研究を開拓できる自立した研究者の養成に力を入れています。全教員が個々の大学院生のテーマにきめ細かく対応し、学位取得まで一貫した研究指導を行っています。卒業生は臨床医学にとどまらず、基礎研究分野でも活躍する多くの医学博士を輩出しています。
研   究
 本講座では悪性腫瘍の病態解明と診断・治療への応用を見据えた生化学・分子生物学的研究を行っています。具体的には、吉田がこれまでに取り組んできたいくつかの細胞死誘導性リン酸化酵素について、その発癌・癌進展・癌転移における機能解析を行っています。講座メンバーのそれぞれの特徴を生かした多彩な研究が展開されており、特に遺伝子改変マウスを用いたin vivo解析や、病理学・臨床各科との共同研究による臨床検体の解析が鋭意進んでいます。あくまでも基礎研究に軸足を置くことは揺るぎないのですが、研究のゴールに見据えていることは診断・治療への応用展開であり、基礎基幹講座が取り組むトランスレーショナル研究として、遺伝子治療や創薬を出口戦略とした応用研究にも邁進していきたいと考えています。

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