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東京慈恵医科大学同窓会

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2018年08月25日 大学講座シリーズ「内科学講座 腎臓・高血圧内科」講座担当教授 横尾 隆

 腎臓・高血圧内科は昭和33年に上田泰名誉教授が創設された当時の第四内科がその起源となります。上田名誉教授は昭和34年に日本大学の大島研三教授らと日本腎臓学会を創設されました。その後、第二内科となり宮原正名誉教授、酒井紀名誉教授が継がれ、その間全国に先駆けて経皮的腎生検術、腹膜透析さらにはIgA腎症の疾患概念の国内導入等、常に日本の腎臓病学を牽引する立場にありました。第四代細谷龍男教授の時、臓器別に改組され現在の腎臓・高血圧内科となり、平成25年より私、横尾隆が第五代主任教授を拝命いたしました。開局以来60年を迎える伝統ある教室であり、130名を越す現役医局員が共通の研修体制のもと診療にあたっています。国内最大規模であるだけでなく、内科学会会頭や腎臓学会会長を四人も輩出している名実共に日本を代表する腎臓内科学教室として自負しております。


 診 療

 当科ではトータルネフロロジーをモットーとし、病初期の尿異常から腎不全医療まで、腎疾患診療に関する全ての領域をカバーすべく、日々の診療に従事しています。経皮的腎生検では本邦でも有数の歴史があり、血液透析導入の基幹病院としても、長年にわたる診療実績があり、周辺関連透析施設も含め本邦では最大規模の透析診療ネットワークを形成しています。透析に伴う長期合併症や併発症による治療も豊富な診療科に支えられた柔軟な対応を行っています。腹膜透析療法も本邦で最古の診療実績と豊富な症例数があります。生体腎移植の診療実績では、腎臓内科が周術期および術後の長期管理を行っている全国的にみても数少ない施設のうちの一つです。二次性高血圧症例では、短期入院による各種負荷検査を積極的に行い、症例ごとに病態に合った適切な治療を行っています。


 研 究

 当科では腎病理班、腎生理・代謝班、高血圧・尿酸代謝班の三つの研究班を中心に研究活動を行っています。

?腎病理班
 伝統的にIgA腎症の臨床病理学的研究を行っており、診療指針のデータソースとなる重要な研究を主導して行い、我が国の診療ガイドラインの作成に大きく貢献してきました。また近年では病理学的手法により日本人のネフロン数が欧米人と大きく異なることを示し、高血圧や慢性腎臓病の発症進展に関与していることを見出しました。さらに臨床応用を見据えた腎臓再生研究を精力的に進めています。将来的に透析、移植に次ぐ第三極の慢性腎不全治療法になりうると国際的に注目されており、精力的に研究を進めております。

?腎生理・代謝班
 腹膜透析+血液透析併用療法を世界で初めて実施し、独自のアプローチによる臨床研究を展開しています。慢性腎臓病に伴う合併症の研究も基礎・臨床の両方から広く研究を行っています。その他にも、生体腎移植の臨床病理学的研究などを行っています。

?高血圧・尿酸代謝班
 血圧計測の各種デバイスを駆使し、腎不全病態における血圧変動や昇圧ホルモンの動態解析などの臨床研究・基礎的研究を行っています。


 教 育

 卒前教育は重要な位置を占めており、参加型臨床実習に重点を置き医学生も研修医同様の役割を担うことにより医師としての自覚を身につけます。また、当科の特徴として慢性腎臓病に伴う合併症の入院も多いことから、腎臓病学だけでなく、内科学を実践しており幅広い疾患を経験することが出来ております。また、屋根瓦式指導により研修医・レジデントの卒後教育をより一層充実させ、教育・研究・診療の三つの使命をバランス良く全うできる優秀な内科医・腎臓医の育成に努めています。毎週行われる朝の抄読会や医局集談会では、関連領域の論文抄読会と各研究領域の最新の知見を紹介し、診療のための知識や技術の習得に留まらず、研究活動についても基礎・臨床の両面から組織全体としてサポートする体制を整えています。さらに、大学院進学を推奨し、国内外を問わず留学を支援するよう努めています。現在も活気ある現役医局員が、互いに切磋琢磨し成長し続けています。このように初期尿異常から透析、移植さらに腎臓再生医学までのすべてを網羅し、一貫して慢性腎臓病患者の診療にあたることのできる本邦でも数少ない教室であり、腎臓内科学に限らず、総合診療医学を習得するにも最も適した環境であり続けるために今後も努力をし続けていく所存であります。

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