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東京慈恵医科大学同窓会

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2019年11月25日  これからの消化器疾患の診療のあり方
〜消化器センター開設に向けて〜
消化器・肝臓内科 猿田 雅之


 近年の消化器の疾病構造の変化は目まぐるしく、様々な消化器疾患や難病の診療能力の向上が課題である。かつて消化器疾患は、肝炎ウイルスによる肝炎や肝硬変、肝細胞癌と、ヘリコバクター・ピロリ菌による胃十二指腸潰瘍、胃癌に代表されたが、近年の治療薬の進化により、これらの感染症が完全駆逐が可能となり関連疾患も減少することが予測される。
 代わりに、潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患が日本を含めた先進国で急増し、完治し得ない難病であるため、その対応は急務で当科も専門外来を設置している。さらに、カプセル内視鏡や小腸内視鏡検査など新規検査の登場に伴い、小腸の炎症性・腫瘍性疾患が増加し注目されている。小腸検査は、高い技術に加え、機器および人員数も要求され、大学での診療が求められる領域である。さらに急増する膵臓癌も専門的な診断と治療が求められている。
 多様化し増加し続ける消化器疾患に対応するために、慈恵医大流の消化器センター設置が必要で、「ゆるやかな連携」、「窓口とトリアージ」が求められる。これは消化器・肝臓内科を中心に、消化管外科、肝胆膵外科、内視鏡科、放射線科、病理学、看護部により構成されるチーム医療を実施することである。良好な医療・院内連携にはわかりやすい紹介先が必要で、消化器・肝臓内科外来を「消化管班」「肝臓班」「胆膵班」「腫瘍班」に細分化し、初診・紹介患者の取り纏めを行い、各種手術を当該科に適切に紹介し、治療後の経過観察を再度引き受けるなどの対応が望まれる。

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