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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年02月25日 退任記念講義を終えて
外科学講座 消化器外科 矢永勝彦教授
演題「Academic Surgeonの育成を目指して」


 平成15(2003)年2月の教授会で信任され、同年4月に前任地の長崎大学から本学外科学講座の第二代消化器外科分野担当教授に就任しました。そして17年が経過し、年号変わって令和2(2020)年3月で定年退任を迎えます。
 就任前には「論文を書かせる方法は?」「肝移植ができなくても来る気ありますか?」「うちの外科を昔のように輝かせてほしい」などのイニシエーションを受け、また就任直後の理事との会食で「趣味を持ってください」とのリクエストに度肝を抜かれました。就任時は外科学講座の多講座合併統合による混乱から、各疾患の短期・長期手術成績は出せず、海外留学歴ある医局員からの質問「論文を書いて何になるのですか」に代表される学術活動の停滞に直面しました。その後も青戸病院事件、科研費不正問題を経て、就任後1年もたたずに外科学講座の統括責任者を託され、講座運営や肝移植開始へのハードルは高く、貴重な経験の連続でした。
 そのような混乱の中、若手医師の執刀機会の確保、外科レジデント制度の改善、研究体制の整備などに取り組み、平成19(2007)年に何とか入局者を二桁台に回復させたところで統括責任者の任を本学卒の大木隆生教授に譲り、以来消化器外科分野を預かってきました。
 現在、外科学講座への入局者は平均すると毎年10人強ですが、その6〜7割は消化器外科に進みます。私の任期中、生体肝移植は24例と少ないながら全例成功し、附属4病院をすべて肝胆膵外科の修練施設にでき、医療の質と安全管理面ではご期待に背くことはなかったかと思います。幸い学術活動は次第に活気を増し、研究論文数や大学院進学者が徐々に増え、学位取得者は累積で八十人近くになりました。振り返ればAcademic Surgeonの育成に最も力を入れたことになります。
 伝統は革新の連続から生まれる、と申します。本学の益々の発展を祈念し、またこの17年間の皆様のご厚情とご支援に厚くお礼申し上げます。

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