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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年02月25日 退任記念講義を終えて
整形外科学講座 丸毛啓史教授
演題「大学生活の道のり―塞翁が馬(その2)」


 大学生活を振り返りますと、整形外科を選択したのは、消去法で残った心臓外科、当時の第二内科、整形外科の中から籤を引いて決めたようなものでした。入局当時の整形外科は、軍隊と言われるような大変厳しい講座でした。周期的に円形脱毛症になりながら、言われるがままに働き、学びました。貝の接着性蛋白質の研究を行うように命じられ、米国に2年7ヶ月間留学しました。毎日のようにムール貝を捌いていました。最後の7ヶ月は、海洋学研究所で研究を続けました。海岸沿いの三階建ての研究所の屋上から海を眺めると、ほぼ180度の範囲で水平線が見えました。振り返ると120度の範囲で地平線、そして残りの60度の林の向こうに小さな町が見えました。自らの意思では決して選択することはなかった経験でした。
 講座担当教授に就任することになって、若手医師の教育プログラムの確立、臨床・研究の活性化、講座運営の透明化を柱とし、10項目の基本方針を掲げ、「プロジェクトX(ten)��変革と挑戦」と命名しました。そして、講座年報に詳細を記して、その実現を公約しました。2年以内にほとんどの公約を果たしましたが、附属4病院の機能分化・分担と一体的運営を完成するまでには十年超の歳月を要しました。原因は人手不足でした。附属病院長時代は北風が強い六年間でしたが、栗原理事長、松藤学長をはじめ、多くの教職員の皆様に助けていただきました。心の支えは、整形外科スタッフが頑張り、業績を伸ばし続けてくれたことです。私のすべきことは、自分の価値観と正義感を信じて一生懸命に頑張ることでした。しかし、いくら頑張って帆を上げても風が吹かなかったならば、前に進むことはできなかったと思います。家庭という安心して帰る港がなければ漂流していたかもしれません。公私にわたり大変お世話になりました多くの皆様に、心から感謝しています。本学と整形外科学講座の更なる発展を祈念しています。

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