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東京慈恵医科大学同窓会

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2022年02月25日 定年退任にあたって
精神医学講座 宮田久嗣教授


 私は、昭和58年に本学を卒業しました。当時は、全科ローテーションなどというものはなく、多くの学生が慈恵医大附属病院に残り、希望する科に直接入局しました。私は精神や脳科学に興味があったため精神医学講座に進み、研修2年を終えてから森温理主任教授の温情で、7年半にわたって本学の柳田知司教授(薬理学)が所長を務める実験動物中央研究所に派遣していただきました。そこで、ラットやサルを用いた薬物依存の動物モデルを作成し、脳を研究する仕事に没頭していました。
 そのような中で、主任教授が牛島定信先生に代わり、いい加減にして教室に戻るように言われ、戻ったところ、精神科病棟は、手首を切る女の子や、多重人格の患者さんであふれ、研究所との違いにカルチャーショックを受けました。そこで、病棟長を7年間勤め、多重人格の患者さんが入院すると、多重人格の症状が他の患者さんに伝染するということも初めて体験しました。その後は、医局、大学、学会、精神鑑定の業務などに追われ、あっという間に退任の日を迎えた気がします。その間、神経精神薬理の国内外の学会を主催したり、アルコールや薬物依存の学会の理事長を務めさせていただきました。
 60歳を過ぎたら好きな(馬鹿な)研究をして良いという恩師の友人(薬理学者)の言葉を信じて、「幸せな恋愛では倦怠期が来るのに、障壁のある恋(不倫など)は燃え上がり、さめないのはなぜか(専門用語でいうと、嫌悪刺激があると、報酬は強化され、耐性が生じにくい)」という作業仮説を、私の専門の脳内報酬系の観点から動物実験で取り組んでいました。このようなわがままを許していただいた本学の包容力に感謝するとともに、探究していく楽しさを若い先生方に伝えることが出来れば本望です。本当にありがとうございました。

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