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東京慈恵医科大学同窓会

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2013年07月25日 生涯学習センターだより
平成25年6月8日(土)開催 月例セミナー
「ヒトパピロ―マウイルス(HPV)ワクチンの現状」
産婦人科 岡本 愛光


 子宮頸がんの原因となるHPVのハイリスクタイプのうち16型と18型の検出頻度が高く、本邦でも20〜30歳代の子宮頸がん患者の約80%から16/18型HPVが検出される。HPV16/18型に対する予防ワクチンが開発され、2価ワクチンと6、11型も含む4価ワクチンが発売され、接種による子宮頸がん予防が世界中で積極的に進められている。16/18型HPVに対してはほぼ100%の有効性が証明され、さらに免疫原性も2価ワクチンでは9・4年後でも自然感染の十倍以上の抗体価があることが報告されている。
 HPVワクチン接種後認められた局所性副反応としては疼痛が最も多く、全身性副反応としては疲労、筋痛などであるが、低頻度ながら重篤な副反応が報告されており、マスメディアも加熱気味に報道している。特に複合性局所疼痛症候群(CRPS)が注目を集めた。CRPSとは、骨折、神経損傷などがきっかけとなり、感覚・運動・自律神経、免疫系等の病的な変化によって発症する慢性疼痛症候群であり、重症例では歩行障害にいたる場合もある。2価ワクチンでは2例/6、844、064接種、4価ワクチンでは1例/1、446、157接種と報告されている。HPVワクチンの副反応について、患者団体と企業側の見解が違い、厚労省検討会が調査中である。現在はその実態は不明としか言えないが、HPVワクチンの有用性は揺るぎないと考える。一次予防はHPVワクチンであり、二次予防は検診による細胞診とHPV検査である。子宮頸がんは「ワクチンと検診」で、女性にとって予防できる「がん」であり、医療従事者にとって予防すべき「がん」である。

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