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東京慈恵医科大学同窓会

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2013年08月25日 第84回慈大呼吸器疾患研究会開催

 第84回慈大呼吸器疾患研究会は、本学西新橋校南講堂において内科学講座呼吸器内科担当桑野和善教授が当番世話人となり、平成25年3月11日に開催された。前半の症例検討会は、臨床、画像、病理と多角的に討論し、分子レベルから個体へ統合的に理解するという、本研究会の目的とする企画である。
 1例目は、本院呼吸器内科小島淳助教の司会の下、呼吸器外科神谷紀輝助教より、肺門側への伸展を示した肺癌の興味深い切除症例が提示され、病理学講座鈴木正章准教授より詳細な解説がなされた。第2例目は、呼吸器外科尾高真講師の司会の下、「徐々に増大する結節を呈し診断および治療に難渋した1例」と題し、肺化膿症が疑われた症例が提示された。抗菌薬治療を行ったが治療抵抗性であり、CTガイド下肺生検を行い嫌気性菌が検出され、適切な治療を行ったにもかかわらず縮小しないため肺部分切除を行った。病理の結果は肺化膿症であり、嫌気性菌も検出された。これに対し、参加した医師より活発な討論がなされ、最後にアドバイザーである放射線医学講座瀧口紗世助教より画像の解説と、病理学講座原田徹講師より病理学的解説がなされた。
 後半に行われた特別講演会は、がん研究会がん研究所がん生物部原英二部長をお招きし、「細胞老化による発がん制御」と題してご講演いただいた。
 本来がん抑制機構の一つである細胞老化であるが、癌化のきっかけとなるDNA傷害によってもたらされる活性酸素による細胞傷害と、老化した細胞の蓄積、そして老化した細胞が産生するサイトカインは周囲の環境に慢性炎症と発癌を誘発することを示された。細胞老化と発癌の複雑な関連についての素晴らしい講演であった。時間を延長しても足りないほどの活発な質疑応答が行われた。参加者は毎年40名前後であり、近隣の総合病院や外科、内科、放射線科を問わず様々な先生方に集まっていただいている。質疑応答も気軽にできる雰囲気であり、様々な分野の医師にとって臨床並びに研究のうえで有意義な会であった。(呼吸器内科 桑野和善記)

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