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東京慈恵医科大学同窓会

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2013年11月25日 論壇 学生を支援する
教職員のネットワーク(昭60)竹森 重 



「こんなこと相談したらつまはじきにされるのではないか」そんな気おくれであなたのお腹はふくれていませんか?
 こんな問いかけを発しながら、教学から一線を画して学生の立場に立つ教職員のネットワークが活動を開始した。医学科19名、看護学科5名の教員と3名の職員がまず取り組むのは、学修を含めた生活のつまずきの予防と早期発見だ。
 そんなつまずきは今に始まったものでなく大袈裟だ、という冷ややかな声も聞こえてきそうだ。面倒を見すぎるからいつまでも成長しないという積極的批判もあるだろう。筆者はそれぞれの考え方に一定の理解を持つ。しかし学生たちが自ら這い上がるのを待てるほどカリキュラムにゆとりはない。
 たとえば医学科では2学年後期に学修上のストレスからつまずく学生が少なくない。自らに適した学び方を把握し損ねるうちに進級試験を迎えた場合が多い。高等学校までの体系化された学びでつまずかなかった彼らは、はかばかしく進まない学修を納得できずに焦りばかりを募らせる。そこでがむしゃらをして気力を失う。あるいは学修の困難が生活上の問題を耐え難くする。本来は学生の学び方の個性の問題であることを、「怠惰」と切り捨てられた時の苦痛は想像を絶する。
 そもそも本学が育てるのはライオンではなく優れた医療者だ。優れた医療者はその前に優れた人格者でなければなるまい。優れた人格はマニュアル化した指示では生まれない。優れた文化・風土こそが人格を育む。ここに学生を支援する教職員のネットワークが着目するもう1つのポイントがある。
 学生たちは既に独自の文化・風土を形成している。教育機関に向けられる社会の視線や家庭環境がそこには大きく影響している。給食を一匙たりとも残さず完食させられた頃と、個性・多様性を尊重する社会・教育環境にある現代とでは、学生が形成する文化・風土もおのずと異なる。今日の環境の是非を論ずる前に、その環境に育った世代が眼前に居ることを忘れてはなるまい。与えられた環境を良かったものにすることが、彼らを育てる世代にまず課せられた責務だ。彼らの文化・風土、多様性を識り、いじめ・ハラスメントを根絶して優れた人格を育む好ましい文化を醸成すること。学生を支援する教職員のネットワークが掲げるもう一つの大きな目標だ。
 社会・教育の変遷の波の中で、タイトなカリキュラムを良き医療者に向けて突き進む彼ら学生たちの立場に深いご理解とご声援を切にお願いする。(医学科学生部長)

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