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東京慈恵医科大学同窓会

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2013年12月25日 論壇
大学院医学研究科看護学専攻の現状から見える課題
(特)櫻井尚子


 大学院医学研究科に、医学専攻に加えて、看護学専攻修士課程が設置されて今年度で5年目を迎える。これは、医学部に医学科と看護学科があることと同様、学祖の「医師と看護婦は車の両輪の如し」という考えに添ったものであると聞いている。定員10名で、平成24年度までの3年間に修士(看護学)学位を31名に授与している。
 当初、看護学専攻は、働きながら学ぶ社会人大学院生を原則としていたが、学修に専念することを可能にした。また、長期履修制度を設置し、就業や子育て介護などの諸事情により2年間での終了が困難な時、事前に申請し認められれば、2年間の規定の授業料で3年間かけて修士の学位を取得することを可能にした。これらの対応は、多様な形態の中で個人のライフワークに添って学び、社会に寄与することが、超高齢少子化社会においては求められるからである。
 修士課程には、専門看護師教育課程26単位コースを二分野に設けている。急性重症患者看護学分野にクリティカル看護専攻教育課程、がん看護学分野にがん看護専攻教育課程・緩和ケア領域である。昨年までに専門看護師認定試験に6名が合格した。現在、本学修士課程の専門看護師教育課程を修了するには36単位以上が必要である。昨年、高度な専門知識と技術を持った専門看護師教育の質の維持と向上を目指すために、教育課程認定審査基準が38単位になることが定められた。このことにより、本学は平成31年までに38単位コースの認定を受けなければならない。将来的には、さらに増やして43単位に専門看護師養成課程は拡大し、より高度な看護実践能力をつける方向にある。
 また、看護学科は開学20年を経過し、第1期生は40歳になろうとしている。今までに本学修士課程に本学看護学科の卒業生4人が入学している。看護教育の場においても、今後中核を担う教員には、博士取得が不可欠になって来ている。全国では、看護系大学は211校、大学院は142校、その内69校に博士課程がある。他大学院にて優秀な成績で博士の学位を取得している看護学科卒業生は、修了大学院の大学にて教員に採用される傾向がある。既に他大学の准教授になっている卒業生もいる。わが国で最も長い歴史を持つ慈恵の看護教育のレベルアップのためにも、看護学専攻に修士課程に加えて博士課程の設置が望まれる。教員に先輩がいることは、臨床と教育の場に、看護の質の向上をもたらし、慈恵精神が紡がれていくことになると考える。卒業生が看護教育の場で後輩の教育を担って慈恵精神を伝えて欲しいと願っている。
 看護師は力を付けなければならない。「医師と看護師は車の両輪の如し」は、互いに独立したものとして対等に、一致協力して患者・地域社会に奉仕することである。「病人を看る」高度な看護実践力を養う教育が「ともに歩む」ためにも求められている。
(医学研究科看護学専攻修士課程専攻長・教授)

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