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東京慈恵医科大学同窓会

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2014年02月25日 本学における臨床実習改革について
医学科教学委員長
(内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科教授)
宇都宮 一典


 現在、医学教育の国際標準化が喫緊の課題となっている。そうした中、本学の参加型臨床実習への取り組みが、大学教育改革を進める文部科学省の「優れた取り組み」(Good Practice:以下GPと略す)に採択され、準備が佳境に入っている。医学教育におけるグローバル化の波は、他分野とは若干趣旨を異にしていると言わざるをえない。すなわち、発展途上国から北米に移住する医師に対して、一定以上の質を確保するために、北米側から提示された条件に端を発しているからである。日本の医学教育を今回提示された国際基準に照らしてみると、臨床実習の時間が不足しており、特に参加型臨床実習がほとんどなされていないことから、認証基準に及ばないことが判明した。そこで文部科学省は、各大学に臨床実習の早急な見直しを促すとともに、平成24年度のGPとして、参加型臨床実習の拡充を目指したモデル事業を公募し、支援を行うこととした。一方、本学では以前から参加型臨床実習に向けた改革を準備していた。この支援事業に、本学が採択されたことは、まさに時宜をえたものと言える。
 参加型臨床実習とは、学生が主体となり患者との関わり合いの中から臨床医学を学ぶ実習方式で、クリニカルクラークシップ(Clinical clerkship、以下CCと略す)とも呼ばれている。米国の臨床実習はみなこの形態でなされており、レジデントとともにチームを組み、診察・検査から治療まで、すべての診療プロセスに参加している。真のCCを実施するためには、学生が持つべき能力を定め、逆算して、どの学年で何を習得させるかを明確にした、系統的な教育システムを構築する必要がある。本学の計画では、3年次までのカリキュラムは変更しないことになっているので、四年次以降が改革の対象となる。まず、4年次の系統講義(座講)を、従来の6〜8割減とし、夏休み明けから、現在のポリクリとほぼ同じ形式で、1年間の見学型臨床実習を開始する。見学型実習中は本院で行う。5年次の夏休み明けから、1ヵ月単位で10診療科をローテートするCCを開始する。内科、外科、小児科、産婦人科、精神神経科を必須とし、実習場所は分院ならびに関連病院として、初期研修医とチームを構成し、実際に診療に参加しながら、主体的な臨床実習を行う。本学の臨床実習改革は、卒前から卒後にまたがる屋根瓦方式の系統的な教育体制を構築するもので、他学からも大変注目されている。紙面を借りて、同窓会員をはじめ全学的なご協力をお願いしたい。

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