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東京慈恵医科大学同窓会

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2014年02月25日 論壇
後進の育成(昭49)細谷 龍男


どんな組織の中にあっても、自分が与えられて行っている仕事をしっかり行わなくてはならない。しかしそれだけでは不十分である。自分が次のステージに進みたかったら、現在自分のやっている事をきっちりとできるような後進の育成をしなくてはならない。
 それをしないで次のステージに移行すると無責任の誹りを免れない。後進の育成をしてから次に進めば確実にステップアップできる。またもっと大きな仕事をしたければ、そのような後進をより多く育成することである。それにより、より規模の大きな仕事に着手できるというものである。また後進を育成することにより、より新鮮な仕事もできるようになり、モチベーションも上がり、時には少し楽をすることもできる。また後輩の人もそれをみてまた後進の指導に当たると思われる。そしてそのようにしなければ仕事が継承できず、伝統も築けない。それをしない者はいつまでも今の仕事を続けなくてはならず、やらされている仕事という概念から脱することができず、モチベーションはむしろ低下する一方で、辛い毎日となってしまう。結果は衰退しかない。
 特に教育機関である大学、とりわけ私の在籍していた医科大学の教室では、研究に対する考え方や診療における患者さんに対する心構えなど、後進の育成が最も重要な仕事であり、それにより自分の研究も、臨床もおおいに発展するものである。このことは卒前教育ももちろんであるが、卒後教育においてその重要度は一層高まると考える。これを一般に屋根瓦方式という。
 私は教授在任中に後任の教授の育成が私に課された最も重要な仕事と肝に銘じていたし、また本学のみならず他大学の教授になってもらえる人材の育成にも腐心したつもりである。それは本学の建学の精神を他大学においても実践していただきたいと願ったからである。それにより東京慈恵会医科大学の伝統がより広く、大きく育ってくれるものと信じているからである。
(慈大名誉教授)

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