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東京慈恵医科大学同窓会

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2014年07月25日 論壇
本学医学生の医学英語修得のための環境作りを
ネイティブ英語模擬患者参加型医療面接早期導入の提案
(昭52) 福田国彦


 医学情報収集における英語環境の圧倒的な優位性、港区国際都心構想で急速に進むグローバル化にあって、本学出身の若手医師が日常に役立つ医学英語を修得することがこれまで以上に要求される時代になった。そのような中、カリキュラム委員会では医学英語教育検討ワーキンググループを立ち上げ、餮早期から医学英語修得へのモチベーションを高めるためのメッセージを医学生に発信する、餽カリキュラムの中で医学英語を実践的に使う環境を構築することを提案した。具体的には、新入生と低学年生を対象にコース外国語において、医学英語の修得が自らの医師としての選択肢を広げることを国際交流委員や留学経験者が学生に伝える、USMLE(米国医師免許試験)の問題を進級試験の一部に導入する、新カリキュラムの集合教育や臨床実習において英語によるプレゼンテーションを推進する、客観的臨床能力試験(OSCE)の少なくとも1ステーションを英語化するなどである。
 秋田大学ではネイティブ英語模擬患者(SP)参加型医療面接(病歴聴取)を、医学を学ぶ前の1年生から導入している。新入生に医療面接を行わせるのは少し唐突な印象を持たれる向きもあるかと推察するが、案外そうでもないことを先日見学して感じた。早期から医療面接を行うことの効果として、医師としての職業意識を早期から醸成できる、相手を真剣に理解し人間として寄り添う気持ちを育てられる、ロジカルな思考と会話術を身に付けられるなどが挙げられる。また、ネイティブ英語SPによる医療面接を行うことの効果として、臨場感と緊張感が学生に伝わり彼らのやる気を刺激する、学生が異文化を意識する、チャレンジしこれを乗り越えることで学生が自信を持つなどがあると伺った。また、臨床を学んだ上で行うOSCEでは、相手を思いやる気持ちや会話術よりも鑑別診断などの知識が学生の頭の中で優先されてしまう傾向があること、低学年で医療面接を経験しておくことで高学年での本格的なOSCEへの移行がスムーズになるという。ロンドン大学キングスコレッジ医学部(元セントトーマス病院医学校が統合されている)を卒業し本学で勤務している医師からも、入学早々にGP(家庭医)のもとに派遣され医学の知識が無いうちから医療面接を行った話を聞く。
 すでに本学では早期から患者と接する前臨床実習が教育センター主導で導入されている。先日行われた医学教育分野別評価基準日本版に基づく自己点検評価に対する外部評価では、評価委員から、本学の前臨床実習が学生の医学履修に対するモチベーションを高めることを理由に高い評価があった。
 本学の医学科達成指針(卒業時アウトカム)は五本の柱から成るが、その二本は「自己の人間性を高め、倫理的・科学的判断能力を磨く」と「医師として適切な態度と行動を身に付ける」である。これらは具体的には良好な意思疎通する力を磨く、社会人・国際人としての教養とマナーを磨く、患者中心の職業的倫理観を身に付けることなどを意味する。このような観点からも低学年のネイティブ英語SP参加型医療面接の導入は理にかなったことである。鉄(学生)は熱いうちに打て!
(放射線医学講座担当教授)

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