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東京慈恵医科大学同窓会

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2014年08月25日 論壇
日本の子どもたちの真の復興は福島から!
(平8)菊池 信太郎


 東日本大震災からあっという間に3年が経過した。福島の子どもたちに、実際に起きたことはどのようなことだったのであろうか?時間の経過とともにその問題意識も薄れ、“仕方ない”的な、半ばあきらめにも似た風潮さえある。
 肥満や運動不足といった体の変化や水面下に持続する心の問題を抱えている子ども、また虐待を受けている子どもの増加が報告されている。被災三県の中でも福島県は特殊な状況にある。県内でも、地域や家庭環境、家族構成、子どもの年齢の違いなどによって、被った影響は大きく異なる。その結果、各自治体や関係者、専門家による対策は非常に複雑になり、対策は不十分と言わざるを得ない状況である。
 この前例のない状況下で何とかして子どもたちを守ろうと、私たちは郡山市、郡山市教育委員会、郡山医師会と協力し、「郡山市震災後子どもの心のケアプロジェクト」を立ち上げた。当初はPTSDの発症予防を目的に、心のケアを中心に据えた活動であったが、体の面、保護者の心の問題、更には子どもを取り巻く環境にまで気を配らざるを得なくなった。
 子どもは日々成長と発達の時間の連続の中にいて、年齢に応じた刺激と経験が必要である。外遊びの敬遠から、屋内でも十分な広さとおもしろさを兼ね備えた遊び場の設置が急務であった。震災から9ケ月後に、市内に巨大な屋内遊び場(PEP Kids Koriyama)を誕生させた。オープンから3年で約70万人以上の親子が遊びこんだ。
 また学校現場と協力し、子どもたちの成長の過程を評価した。幼少期では体の成長が抑制されている子がいること、学童期で肥満児が増加し始めることがわかった。さらに、隠れたやせの子どもも増加している。全国的にも肥満児の増加が指摘されてきたが、福島の現状はこの傾向にさらに拍車がかかった状態であり、単に外遊びをしなくなったからだけの理由ではない。
 今回の震災により、福島を中心とした被災地の子どもたちは、大きな問題を抱えることになった。しかしこの問題の原点は、日本の高度経済成長の陰に一九八〇年代頃から全国的に始まった子どもたちの成育環境の悪化であるように思える。福島の子どもたちは、今回の震災で一生の宝になる何かを得られるであろうか?私は、その子どもたちを『日本一元気な子』にすることが、彼らへの償いだと思う。福島の取り組みが、ゆくゆくは日本全国に波及し、日本中の子どもが皆元気になる日を信じている。
 (郡山市震災後子どものケアプロジェクトマネージャー・NPO法人郡山ペップ子育てネットワーク理事長・政府復興推進委員会委員)

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