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東京慈恵医科大学同窓会

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2014年11月25日 臨床医の研究、国際共同研究体制構築と課題
泌尿器科学講座 木村 高弘


 グローバル化する世界の中で、欧米の研究者が共同研究のパートナーとして本邦に求めているものは、質の高いアジア人データの提供である。基礎研究分野では人種間の遺伝学的差異が疾患の病理に与える影響が重要な視点となっている。また、創薬、臨床研究分野においても巨大なアジア市場を見据えたグローバルな臨床試験が進められ、アジア人のデータの重要性が増している。その中で質の高い基礎および臨床データを提供できる環境はすでに本学にあり、さらに発展させていくべきである。
 当科ではこれまでに、欧米の研究機関と国際共同研究を行ってきた。欧州の施設との共同で行った前立腺剖検癌の国際比較に関する研究で、アジアで唯一の共同研究のパートナーとして本学が選ばれたのは、本学における病理解剖の質の高さが評価されたからである。一方で、国際共同臨床試験への参加のハードルは依然として高い。
 われわれは平成21年に欧州研究施設との国際共同医師主導臨床試験への参加を試みた。保険適応外薬剤や事務局とのコミュニケーションなどのハードルは乗り越えたが、最終的に当時本邦では存在しなかった、臨床試験において法律上の賠償責任がない場合の患者補償制度である「無過失補償」の問題が解決できずに断念した。本学には世界に通じる「豊富で質の高い臨床」「全学的な協力体制」という強みがあり、全学的に取り組むことで、さらに発展させることが出来ると考える。

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