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東京慈恵医科大学同窓会

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2014年11月25日 研究の自由、そして誉れ
熱帯医学講座 嘉糠 洋陸


 本学が関係する医学・生物学論文の1年間当たりの報数は、90年代初頭から変わらず横ばい傾向にある。順天堂大学に比するとその数字は約半分であり、一見他学医学部に大きな差を開けられている。
 しかし、文科省科研費1000万円当たりの論文生産性について、本学は全国平均(5.8報)や順天堂大学(6.9報)を遙かに上回る成果(12.8報)を上げていることが明らかになった。
 その理由は、10年前の研究費不正による逆風のなか、本学独自の研究奨励費制度や総合医科学研究センターを中心とした研究支援体制の整備などを地道に進めたことによる。日本人のノーベル賞受賞者の多くは、その初期の重要な成果を少額の研究費により挙げている。本学においても、複数の教員が国際一流誌であるネイチャーなどに掲載される独自の知見を、小さな規模の研究から得ていることは瞠目である。
 これらの事実は、慈恵らしい自由な研究風土とそこに隠れた“研究力”を如実に表している。本学は、東大や慶應が与するメガ・サイエンスを追随すべきではなく、一方で「次の研究費獲得のために研究をする」という悪循環に陥らないような傾注が求められる。そのためには、無為な研究を止める自由、研究を選ぶ自由を支援する学内体制を構築し、デパート型ではなく専門店型研究を推し進めるムーブメントを今一度起こすことが必要である。
 自由を謳歌した研究、それを成し遂げた人間のなかにこそ、誉れは自然と湧き上がる。

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