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東京慈恵医科大学同窓会

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2014年11月25日 慈恵医大遺伝病研究の歩みと未来
総合医科学研究センター 大橋 十也


 私が専門とする先天代謝異常症を例にとると、1960年代には異常に蓄積した代謝物質の分析から、欠損酵素の解明が行われ多くの先天代謝異常症の原因が解明され、それを元に治療法が開発された。1990年代になると分子生物学が遺伝病研究分野の中心となり、やはり本学でも病因遺伝子の解析などが盛んに行われた。本学も一定の役割を果たしてきた。近年は技術の進歩とともに遺伝子解析が社会的にも関心を呼んでいる。
 例えば女優のアンジェリーナ・ジョリーの遺伝情報に基づく予防的乳房切除、母体血で胎児の染色体異常症を診断する無侵襲的出生前遺伝学的検査、遺伝子解析ビジネスの氾濫などがその良い例である。1990年より13年かけて数千億円の費用を費やしてヒトの全ゲノムシークエンスが明らかとなったが、次世代シークエンサーの登場により数日で10万円それが可能になり遺伝子医療は大きなパラダイムシフトを迎えている。現在までは詳細な診察、検査により特定の疾患を疑い、その遺伝子を解析するという診断が行われてきたが、現在では、鑑別診断などを考えることなく全遺伝子を検索するという手法が採られつつある。本手法は強力で実際に100以上の疾患の原因が解明されている。本学でも、この分野の充実は研究、診療にとって喫緊の課題である。そこで本講演では現有組織、機器を最大限利用したバーチャルセンターとしての慈恵ゲノムセンターの設立を提案した。

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