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東京慈恵医科大学同窓会

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2014年12月25日 論壇 エンゲージメント
(昭63) 常喜達裕


 「エンゲージメント」という言葉を医療の中でも耳にするようになった。「エンゲージメント」とは、職員から職場への連帯意識の意味として使用され、これまで馴染みの深い、職場を中心とした「帰属意識」という考え方とは意味が異なるものと理解されている。すなわち、「エンゲージメント」とは、職員から見た病院との信頼関係を意味する。現状でも職員は病院に対して貢献することを約束し、病院は職員の貢献に対して報いることを約束している。しかしながら、その意識には個々によって差がある。その意識の程度に相当するものが「エンゲージメント」であり、職員と病院との一体感を表す指標ともいえる。「エンゲージメント」が高い職員が多くいることは、その病院が人という資産において競争優位性を有していることの証になる。「エンゲージメント」が高い職員が多いほど組織の基盤は磐石なものとなり、問題や課題を乗り越えやすいことは、誰もが理解できることであろう。
 平成26年4月の診療報酬改定、6月の医療介護総合確保法公布で患者の受診動態や病院・医院のあり方が大きく変化してきている。この改正の目的は、「地域包括ケアシステム」を具現化することである。国民は、責務として病院や医院の機能をよく理解して受診しなければならないことも定められた。今後、特定機能病院である大学附属病院は、高い専門性と高度な総合医療に特化されていく。外来機能の専門特化にあたっては、症状の落ち着いている患者を地域の診療所・クリニックへ逆紹介することが求められている。ところが現状は、患者も病院職員も新たに作られる「地域包括ケアシステム」の方向性が分からず混乱をきたしている。この大きな医療システム改変の中で、これまでどおり慈恵医大の理念に則った医療を継続していくためには、全職員が一丸となって患者・家族及び連携医療機関に丁寧な説明とお願いをしていかなければならない。院内においては、まず、「エンゲージメント」をさらに高めていくことが必要になる。そのために、我々、患者支援・医療連携センターは、院内において共通のビジョンを呼び覚ます役割を担い、積極的に問題解決を行い、異なる意見に対しても柔軟に対処できる組織でありたいと思う。患者・家族・職員及び連携医療機関の「エンゲージメント」を高めることが患者支援・医療連携センターの使命であり役割であると考える。
(患者支援・医療連携センターセンター長、脳神経外科・准教授)

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