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東京慈恵医科大学同窓会

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2015年01月25日 論壇 ロコモ予防 ―健康寿命を延ばすために―
(昭50)南郷 明徳


 介護認定審査会の資料に目を通しながら、年々90歳以上の高齢者が増加していることを実感していた。医療、福祉にも関係する「2030年問題」がある。2012年の総務省の予測で、2030年に日本では65歳以上が総人口に占める割合が31・8%とほぼ1/3に達する。65歳以上が総人口の7%以上で高齢化社会、14%以上で高齢社会、21%以上を超高齢社会と呼ぶ。日本はすでに平成19年に先進諸国のどの長寿国よりも短期間でかつ真っ先に超高齢社会となった。今後は団塊の世代の高齢化、大手予備校が7割の廃校に至るほどの少子化が相俟ってこの現象に拍車が掛かる。
 労働人口が減少し納税者が減る一方、年金給付、医療費、介護費は増大する。2030年には20歳から64歳の1・7人で20歳未満と65歳以上の一人を背負うことになる。国は少子化対策として託児所を増やし、育児休業後の職場復帰を円滑にするなどの施策で女性の就業環境改善を計り、一方で65歳以上という高齢者の定義を変え70歳以上として就業期間長期化を図るとともに、年金支給開始年齢を引き上げて原資の減少を防ごうとしているようだ。税収確保のため幅広い世代から徴収できる消費税はすでに8%になり、10%への引き上げも目前である。
 こうした状況下で、健全なる超高齢社会創生には健康寿命の延長が大きな力となろう。昨年のWHOの統計で平均寿命は日本女性が87.0歳、男性は80.0歳である。だが、これには介護を要する期間が女性約12年、男性約9年含まれる。健康寿命はそれぞれ75歳と71歳ということである。この健康寿命を延ばさなければならない。
 健康寿命を延ばす目的で進められているのが、日本整形外科学会(日整会)のロコモ予防の取り組みである。ロコモとは学会の提唱する「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」の略称であり、運動器の障害で要介護になっているか、そうなるリスクの高い状態をいう。同窓諸氏も最近耳にすることが増えたと思う。寝たきり、要介護原因の30%強を占めるのが転倒、骨折、関節疾患である。運動器機能を維持し、さらには改善させて寝たきりや要介護の期間を短縮することを目指している。ロコモになっているかどうかは、片足立ちで靴下がはけるか、家の中でつまずいたり滑ったりするか、階段を上るのに手すりが必要か、やや重い家事ができるか、2?ほどの買い物をして持ち帰ることができるか、15分くらい歩けるか、青信号のうちに横断歩道を渡り切れるか、という七項目のいずれかが該当するかを自己判定する「ロコチェック」で見分ける。ロコモに該当する人には開眼片足立ちとスクワットからなる「ロコトレ」を1日3回行うことを勧める。腰と下肢の筋力を強化し、バランス感覚を取り戻すことがロコモの予防になる。渇に臨みて井を穿つのでは遅い。どうか整形外科以外の方々も患者さんやそのご家族にロコモ予防を呼びかけて欲しい。ロコモ予防の詳細は日整会のホームページをご覧いただきたい。
(同窓会理事)

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