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東京慈恵医科大学同窓会

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2015年02月25日 最終講義を終えて
老年看護学 櫻井 美代子


 2年前にリニューアルされた看護学科大講堂で最終講義を行う機会を与えてくださいました大学関係者の皆様に心より感謝申し上げます。最終講義では、老年看護学の教育研究を通して私が学生達に伝えたかったことをお話させていただきました。
 平成3年に看護学科設置準備室長であった馬詰良樹教授に「老人看護学を教えるように」と言われたのが、私と老年看護学との出会いでした。その後、老年人口の増加に伴い高齢者の医療福祉現場における様々な課題に直面する中で、徐々に老年看護学の必要性とその魅力にひかれ、気がつけば23年間の歳月が流れていました。講義を通して私は、祖父母との同居経験の少ない学生たちが高齢者に対して「人生の最終ステージにあり、常に何らかの援助や介護が必要な人」といった先入観を抱いていることに危機感を覚えていました。超高齢社会を迎えた我が国において、これから高齢者医療を担う学生達がこのような年齢差別意識(age-ism)を持つことは、患者の潜在的能力を引き出せないだけではなく、変化する可能性すら奪う危険性があるため、高齢者自身が持っている様々な能力に応じたケアの必要性を伝えてきました。また高齢者医療における倫理的課題でもある「人工的水分・栄養補給法(AHN)導入における家族の代理意思決定」について、自分自身の体験に基づきお話をさせていただきました。
 今後ますます複雑で深刻な課題を抱える高齢者医療の現場で活躍する学生達には、常に患者や家族の思いに沿える看護実践者になって欲しいと願っています。最後になりましたが、慈恵看護専門学校に入学して以来、43年間にわたりご指導、ご支援くださいました慈恵大学の教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。

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