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東京慈恵医科大学同窓会

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2015年02月25日 論壇
学外での活動とその継承の重要性―世界の舞台への挑戦―
(昭61) 岡本愛光


昨年、赤崎勇、中村修二、天野浩の三氏がノーベル物理学賞を受賞し、またスポーツ界では田中将大、浅田真央、羽生結弦、錦織圭などの諸選手が活躍し、各界において多くの日本人が名を残した。一方、ロシアがクリミアを併合、タイでクーデター、米・キューバが国交交渉再開など、日々、日本を取り巻く世界情勢が激しく変化する中、歴史と伝統のある本学の一員であるわれわれに必要なものは何か?私は学外活動の重要性をひしひしと感じている。それは学内のみでなく、国内外を問わず学外での学びの大切さを知ることである。私自身、学内での臨床から離れ、学外での研究生活から学んだリサーチマインドが現在の私の礎になっていると言っても過言ではない。
 慈恵という恵まれた環境から外の世界へ出て、世界レベルの基準で判断される緊張感、コミュニケーション能力の大切さ、自分をリセットゼロにし、差別や批判を受けること、迷いや挫折がありながらも勇気をふるい、世界の舞台へ挑戦することは、現在の私たちにはとても大切なことと感じている。おそらく前述した各界で活躍した日本人達はそれらを経験しながらもたゆまぬ努力で勝ち抜いてきたのだろう。
 学外で働くと学内にいては気づかなかったパラメディカルの陰なる努力に気づいたりする。さらには人種を越え、様々な宗教や習慣、考え方に接し、それを受け入れながら積極的にコミュニケーションをとることで、自分の気持ちが少しずつ大きくなる成長感を味わうこともある。
 今、世界の何処に行っても情報は容易に入手できる時代となった。しかし逆に多くの人のために、世界のために、なにか大きなことを成し遂げるミッションを持って、世界に向けて発信できる日本人はどれだけいるだろうか? iPS細胞や青色LEDも、世界で認知されなければノーベル賞を受賞する事はなかっただろう。その実現のためには自分の知識や技能を向上させることはもちろんだが、世界の共通語である英語能力の習得は必須である。常に海外に発信する事を意識し日頃から英語に対する苦手意識を取り去るようトレーニングをする事はとても大事である。そのためにも学内での英語によるdebateを増やし、学外での積極的な臨床あるいは研究活動を支援する体制を整え、それを継承していくことは大変重要である。その結果、最新の医療技術や臨床に直結したトランスレーショナル研究が学内にどんどん導入され、学内の活性化につながる。それはつまり高い医療倫理観と豊かな人間性、チーム医療を遂行できる協調性、研究を立案し、実行できるリサーチマインドを持ち世界に発信できる慈恵人の輩出につながると信じている。
(産婦人科学講座担当教授)

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