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東京慈恵医科大学同窓会

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2015年12月25日 葛飾医療センター
放射線治療部門の再開


 葛飾医療センター別館において、平成28年1月から、最新のリニアック装置を用いた放射線治療部門が稼働を始めることとなった。旧青戸病院時代には26年にわたり微力ながら癌医療の一翼を担ってきたが、リニアック機器の老朽化と新病院建築のタイミングなどから、五年間放射線治療を休止せざるを得なかった。この間、葛飾医療センターの先生方および患者さん・ご家族には、本院や他の病院で治療を受けざるを得ず、多大なご迷惑とご面倒をお掛けしたが、伊藤洋病院長をはじめとした葛飾医療センターの先生方、葛飾区の同窓の諸先生方および大学理事のご理解と多大な援助によって、ようやく放射線治療部門が再開する運びとなり心より感謝申し上げたい。
 葛飾医療センターは、旧青戸病院時代から、長い間葛飾区における基幹病院として高度な医療を提供してきたが、現在では365床を有し、一日平均外来患者数が1,100名を超えるに至った。多くの癌患者を治療する基幹病院として放射線治療は不可欠なものであり、さらに葛飾区には現在放射線治療を施行できる施設が他にないことを考慮すると、今回の放射線治療再開は極めて重要な意義があると考えている。
 今回導入されたリニアックは、欧州を代表するエレクタ社製(スウェーデン)の最上位機種In-
finityで、都内においても二台目となるものである。高度な位置ズレ補正技術、コンビームCTを搭載した画像誘導技術や高精度のIMRT(強度変調放射線治療)などを行う上で現在考えられるほとんどの機能が搭載されている。このような最新機器によって、旧青戸病院時代の二次元放射線治療から一挙に三次元・四次元放射線治療へ道が開かれることとなった。
 現代の癌治療は脳腫瘍、乳癌、頭頸部癌、肺癌、消化器癌、婦人科癌、泌尿器癌などいずれも集学的治療が主流であり、さらに近年では同時併用による有効性が確立されつつある。受診患者の八割が葛飾区民である葛飾医療センターにおいては、残念ながらしばしば進行した状態で診断されるケースが見受けられる。進行した癌症例においては集学的治療の重要性がより高まるが、このような観点からも葛飾医療センターにおける放射線治療の重要性がご理解頂けると考える。また同窓の先生方には、これまで諦めざるを得なかった高度な集学的医療に加え、緩和医療の提供にもお役に立てると考えているので、葛飾医療センターの各診療科の先生方にご相談頂ければ幸いである。
 一方で、放射線治療および放射線治療医を取り巻く環境は全国的に極めて厳しく、慈恵医大もその例外ではない。そのため、すべての附属病院に常勤の放射線治療医を確保することは現時点では困難な状況である。このような状況においても、可能な限り葛飾医療センターの高度な要求に応えるべく、今回のリニアック導入に当たっては、本院との安全なインターネット環境を完備し、遠隔での治療計画環境を整えて頂いた。これによって放射線治療医が不在な場合における緊急対応も可能となる。
 以上のように、葛飾医療センターにおける放射線治療医の状況は必ずしも完全なものではないが、同センターを受診される患者さんに高度な医療を提供すべく徐々にその環境を整えていきたいと考えている。これからも各診療科の先生方、大学および同窓の先生方のご理解とご援助をお願い申し上げたい。
(放射線治療部 青木 学記)

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