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東京慈恵医科大学同窓会

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2016年11月25日 シンポジウム3
内視鏡先進国日本における
国際技術機器開発の海外展開へ向けた
現況と展望
内視鏡科教授 炭山 和毅


 胃カメラ開発に端を発し、日本の内視鏡メーカーが持つ世界シェアは90%を超えている。本邦から発信された技術は、内視鏡本体だけではない。早期消化管癌の概念は日本内視鏡学会によって定義され、更にポリペクトミーや、EMR、ESDの開発により、その多くが内視鏡的に治療できるようになった。これらは日本の内視鏡医と技術者が連携し、研究開発を積み重ねた賜物である。
 しかし、市場の国際化が進み、安価で質の高い製品が世界中で生産できるようになった今、海外展開には新たなアプローチが求められている。胃癌の多い日本では、早期胃癌の質的診断や治療成績向上を目指した技術開発が進んだが、欧米では大腸ポリープやバレット食道腺癌のスクリーニングに対する関心が高く、医師主導研究から生み出されたベンチャー企業によって、ユニークなデバイスが次々に開発されている。
 一方、途上国における内視鏡の適応は、未だ止血術や進行癌の診断、ステージングが主体で、経済的背景からも日本の高性能・高価格の内視鏡技術をそのまま普及させることは容易ではない。そこで近年は、産学官合同による人材育成支援を伴うパッケージ型事業が、特に東南アジア諸国を対象に推進されている。今後の海外展開を視野にいれた機器開発では、疾病構造や社会経済環境、規制の多様性を踏まえ戦略を立てていくことが重要であろう。

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