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東京慈恵医科大学同窓会

最新情報


2019年01月25日 大学講座シリーズ
「外科学講座 小児外科」
診療部長 大木 隆生


【沿革】
 わが国では、昭和53年に小児外科が一般診療科目として認定されました。一方、慈恵医大で最も古い小児外科手術は、記録上では昭和17年に旧第一外科高田善教授が12歳の男児に腰髄麻酔下で行った腸間膜裂孔小腸嵌頓の腸閉塞症に対する内ヘルニア修復術であります。また、平成8年に旧第一外科の主任教授に就任された山崎洋次教授が現在の小児外科の基礎を築かれました。その後、平成13年4月に外科が大講座制となり、同年11月に本邦で初めて大学内に母子医療センターとして「東京慈恵会医科大学総合母子健康医療センター」が大学のE棟に開設されました。そして平成18年には大木隆生教授が小児外科・血管外科分野担当教授・小児外科診療部長に就任したのを機に小児外科は新たなステージに入り、今日を迎えています。

【現況】
 小児外科は15歳以下の小児が対象の外科ですが、慈恵医大の小児外科では胸部疾患・消化器疾患に加え、小児の泌尿器や婦人科の外科的疾患の診療も行っています。本院の診療体制は、日本小児外科学会専門医・指導医の2名と若手スタッフ3名の計5名体制です。柏病院は常勤医2名、飾医療センターは常勤医1名、第3病院は、非常勤で小児外科専門外来を行っています。関連病院は、川口市立医療センターが常勤医1名、他学(埼玉医大・東京都立小児医療センター)への派遣2名、海外留学1名の体制です。

【教育】
 外科学講座は大講座制をとっていますので、若手小児外科医の教育は、3年間の一般・成人外科医としての後期研修を行い、外科手術の基本を身に着けてから、小児外科の修練に入ることになります。このローテーション制度は小児外科医を目指す若手医師からも人気であり、そのリクルートにおいても有利でした。また、成人外科で多くの経験を積むことが、小児外科医としても貴重な経験となります。

【診療】
 慈恵医大小児外科の臨床上の特色は、?鏡視下手術、?胎児診断、?超低出生体重児を含めた新生児の治療です。鏡視下手術を早くから取り入れており、2名の内視鏡外科学会技術認定医が治療に携わっています。また、胎児診断に関しては、一部スタッフの米国への留学経験を活かし、胎児期に発見された先天異常に対し、妊娠中から分娩時期や分娩方法と出生後からの治療を計画的に行うことが可能となりました。計画的に治療を行うことで治療成績も向上しており、平成27年には小児科、麻酔科、産科、看護部、手術部をはじめとする関連各科の協力を得て先天性気管閉鎖の患者に対してEXIT(帝王切開による分娩時に臍帯の血行を保ちながら胎児に処置を行う手技のこと)による気管切開も成功させ、合併症なく救命することに成功しました。写真の通りこの手術に際しては関係各科により構成された総勢30名のスタッフが立ち会い、オール慈恵で完遂しました(術者平松友雅助教・平17、助手芦塚修一講師・準昭63)。また近年の新生児医療の進歩により、500g前後の超低出生体重児の肺や腸管の手術も可能となり、後遺症を残すことなく治療できる機会が増えています。
 さらに、慈恵医大は小児がんに関して高度な診療提供体制を有する医療機関として「東京都小児がん診療病院」に認定されています。小児外科では、小児科の血液腫瘍班や病態によっては成人外科や他科とも連携・協力して、小児固形腫瘍(神経芽腫・ウイルムス腫瘍・肝芽腫・その他の軟部組織腫瘍など)に対しても、最良の治療を提供出来るような体制を整えています。

【研究】
 基礎研究では、幼児の電池の誤嚥による食道穿孔が大きな問題になっている事を背景とし、吉澤穣治講師(準昭63)を中心に豚を用いたコイン型電池による食道損傷の実験を行っており、競争的研究費も多数獲得し、複数のメディアでも取り上げられたインパクトのある研究です。

【最後に】
 全国的な外科離れが進むなか、大講座制の強みで小児外科には毎年志望者がおり、充実したマンパワーを誇っています。2020年N棟に小児・周産期医療センターが開院されます。それを期に当科は一層関連各科との連携を深め、さらなる発展を遂げることで社会と母校に貢献する事を目指しますので、諸先輩におかれましてはどうか温かく見守っていただければ幸いです。

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