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東京慈恵医科大学同窓会

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2019年11月25日 若手へのメッセージ:AI時代の医師の働き方:内視鏡診断支援用AI開発の経験から
内視鏡医学講座 炭山和毅


 内視鏡科では、新しい病院にふさわしい新しい医療に挑戦しようと、2017年度からAMEDの支援を受け、AI技術を用いた内視鏡診断支援システムの開発に取り組んでいる。高齢化が進んだ本邦は、人口の半数以上が、50歳以上となる、すなわち内視鏡的な消化管がんのスクリーニング、サーベイランスの対象になる時代となり、現状の資源では、人的にも、経済的にも社会の要請に応えることが難しくなっている。研究開始当初、AIの診断精度の向上があまりに早く、AIが我々の救世主になる日もそう遠くはないと思われた。しかし、研究を深化させるにつれ、次第にAIが持つ課題も明らかになってきた。例えば、AIを十分に賢くするには、専門医の手によって膨大な量の、また質の高い学習用教材を作成する必要がある(AIのために働く医師が必要!)。言葉を持たないAIと医師とのコミュニケーションギャップを解消することは容易ではない。さらに、日進月歩のAIを、ランダム化比較試験やpeer reviewといった時間のかかる従来の学術的手法で評価することは難しい。しかし、今後の医師は、AIやロボットとの共存が不可避であり、先んじてこのような課題を実感できたことも一つの研究成果であったと考えている。
 若手には、困難を恐れず、新しい環境で新しい医療に挑戦し、その成果を社会に還元してもらいたい。また、AI時代だからこそ、知識や技術を誇る医師ではなく、建学の精神を実践する医師を目指してほしい。

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