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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年02月25日 最終講義を終えて
外国語教室 英語研究室 小原 平教授
演題「中世の書簡―マーガレットとサーバントの役割」


 まだ名古屋に住んでいた小学校低学年のころ、家族で東京タワーに行った。そのとき買ってもらったタワーの模型を大事そうに抱えている写真がある。模型はどこかにいってしまったが、同じときに買った絵葉書はまだ残っていて、最終講義のときに紹介したが、そこにはよく見ると慈恵医大の校舎が写っている。まさかそのときから約25年後に慈恵医大で教鞭を執ることになり、以後30余年にわたり勤めることになろうとは、おかっぱ頭の少年は知る由もなかった。
 私の専門は中世英語で、15世紀にイングランドのノーフォーク地方の有力者であった、パストン家の人々の書簡の分析を行ってきた。大学の恩師の紹介で慈恵医大に就職することになったが、母校早稲田とは全く異なる大学の雰囲気に最初はとまどいを覚えたものの、優秀な医者の卵の学生諸君に英語を教えることにやりがいを感じ、時代とともに医学の現場や論文執筆において、英語の必要性がますます高まっていく中で、試行錯誤しながら教育方法を模索していくこととなった。西新橋で多くのドクターにご協力いただいて、少人数のゼミナール形式の授業を実現できたことや、発音はじめ関連情報をリンクさせた医学用語のリストの作成等を通じて、多少なりとも慈恵の学生諸君の英語力の向上に貢献できたのではないかと自負している。自動車部やヨット部の顧問を務めたことで、医学を離れてスポーツに打ち込む学生諸君の溌剌とした姿にふれられたのも良い思い出である。
 最後の2年余りは、思いがけず病魔に冒され、十分な仕事ができず各方面に迷惑をかけた。栗原理事長、松藤学長はじめ、多くの先生方や学事の諸氏のご助力無くして、定年まで勤めあげることはとてもできなかったと思う。この場を借りて深く御礼申し上げます。

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