トップページ

東京慈恵医科大学同窓会

最新情報


2020年03月25日 大学講座シリーズ(44)「分子生物学講座」
講座担当教授 松藤 千弥


【沿革】
 分子生物学講座は昭和44年に栄養学講座として発足した。当初の講座主任は松田誠助教授(後の医化学講座主任教授)である。昭和50年4月、大阪大学医学部の林伸一助教授が主任教授として着任した。当時のメンバーは、医化学講座から参加した助手3名と研究補助員2名だったが、徐々に新たな教員や大学院生が加わって活況を呈した。昭和57年、旧大学本館から現在のF棟北側1階に移転、平成7年9月、栄養学講座は生化学講座第2に改称された。平成9年3月に林教授が定年退職した後、生化学講座第1の大川清教授が生化学講座第2を兼任した。平成19年4月再び講座の改称があり分子生物学講座となった。同年5月に松藤千弥が講座担当教授に就任した。
 令和2年3月現在の講座のメンバーは、教授 松藤千弥、講師 村井法之、小黒明広、助教 大城戸真喜子、田島彩沙(米国留学中)、研究補助員 寺崎早苗、澤田理恵および訪問研究員3名である。

【教育】
 主に医学科2、3年生の教育を担当している。2年前期のコース基礎医科学?、ユニット「分子から生命へ」が中心であり、講義、演習および実習を生化学講座の教員と協力して担当している。講義では生化学や分子生物学と臨床医学との関連を具体的に想起できるように工夫し、演習では、少人数グループにおける発表と討論を通して、生命科学の知識や手法に基づく病態の理解を深める。さらに実習では、アルビニズムや遺伝性肥満のモデル動物を用い、一遺伝子変異による表現型の違いを、遺伝子発現の各段階で解析する生化学・分子生物学的実験を行い、その考察を通して論理的思考力・表現力を養う。演習で修得した生命情報科学の手法を用いた実験結果の考察も行い、近未来の医学研究者、臨床医としての素養を磨いている。
 その他、医学科3年では、臨床基礎医学ユニット「症候学演習」、「感染・免疫テュートリアル」、外国語?ユニット「医学英語専門文献抄読?」、研究室配属などを、看護学科では2年生の「生化学」を担当している。

【研究】
 当講座では、多機能生命分子であるポリアミンとその関連分野に関する研究を推進している。ポリアミンは細胞増殖因子として知られるが、最近オートファジーの誘導による老化抑制因子としても注目を集め、がんだけでなく、生活習慣病、心疾患、神経変性疾患、炎症性疾患等との関連が盛んに研究されている。当講座におけるポリアミン研究は、林教授による、ポリアミン合成の律速酵素、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)の研究が発端である。特に、アンチザイムというタンパク質が、ポリアミン濃度上昇に伴い翻訳フレームシフトという特異な機構で発現し、ODCに結合してユビキチン非依存的にプロテアソームによる分解を引き起こすという、細胞内ポリアミン濃度のフィードバック調節機構を明らかにしてきた。現在もこの流れは引き継ぎつつ、病態解明や治療に結びつくテーマで研究を進めている。具体的には、アンチザイムの腫瘍抑制機能、ポリアミンの肺疾患治療への応用、腫瘍マーカーとなるポリアミンのRNAアプタマーによる検出などが挙げられる。
 松藤教授は、平成30年12月、日本ポリアミン学会の会長に就任した。講座は学会事務局を担当し、講座メンバーが総務、広報、会計を分担している。学会ホームページ(http://pa.umin.jp)から閲覧できる学会誌「ポリアミン」は、本邦のポリアミン研究が概観できるとして好評である。令和2年1月には、本学において日本ポリアミン学会第11回年会を主催した。

top