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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年11月25日 第137回成医会総会特別企画2

みらい医療を支えるAIとデータ
〜医療のデジタルトランスフォーメーションをどう推進するか〜
帝京大学医療情報システム研究センター教授 澤 智博

 デジタルトランスフォーメーション(DX)。COVID―19で大きなダメージを被った社会が期待しており、医療においてもDXが期待されている。社会のDX推進には、「人」、「情報システム」、「データ」、「AI」があると考える。医療も同様で、それらに「医療の」と付けると想像できよう。最初に「AI」であるが、現代AIの本質は機械学習である。データから学習し、学習結果を活用するシステム(機械)は、医療でも進展が著しく、特に医用画像解析で成果を上げている。当初は画像解析の正確性の数値のみが着目されていたが、様々な製品も上市される現在、医療者には性能や特性を見極め評価し使いこなす能力が求められてきている。次に、「情報システム」と「データ」である。電子カルテが一定の普及をしている日本であるが、システムの構造は20年近く遅れており機能も進展がとまっているのが現状である。現在の電子カルテは伝票の廃止など業務上の効率を向上させたが、医学・医療の課題発見やその解決には役立っているとは言い難い。医療のDXは、アナログからデジタルではなく、既存ITシステムのDXと解釈できよう。医療ITに求められる要素は、「AI」「BI」「CI」「QI」と考える。医療データを常に解析するAI、人間に知見を与えるBI、ガイドライン提示など医療者を支援するCI(Clini-cal Intelligence)、医療行為を評価するQIである。これらがLea-
rning Healthcare Systemsを実現すると考える。
 最後に、DXを推進するのも阻害するのも「人」である。既成概念と悪しき習慣を捨て去る必要がある。「ハンコ」廃止が議論されているが、「工程表」「報告書」に象徴される文書形式主義もDXの阻害要因である。新しい医療者の価値観が医療のDXを推進するであろう。

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