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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年11月25日 第137回成医会総会特別企画4

予防・精密医療へのパラダイムシフト
国立国際医療研究センター研究所遺伝子診断
治療開発研究部部長/メディカルゲノムセンターセンター長 加藤 規弘

 急速に高齢化が進む我が国でヘルスケア、医療は大きな転換期を迎えている。Society 5.0では、「未病ケア・予防」「個別化」「個人の主体的な関与」の3つが、我が国の目指すべき未来のヘルスケアの姿として示されている。
 一口に予防といっても、健康の保持・増進(1次予防)から病気の進行・再発の抑制(3次予防)まで幅があり、長期的には1次予防を一層強化していく必要がある。病気になっても高品質の医療を平等に受けられる我が国の保険医療の恩恵とも言えるが、健康への関心が余り高くない人々が相当数存在する。そのような人々に行動変容を促すためには個別化が必要である。個別化は高度に精密な健康状態の評価を前提とすることから「high-definition medicine(遺伝素因、生活習慣、環境暴露を指標としたデータ駆動型医療、精密医療とほぼ同義)」というアプローチが提唱されている。多種類のデータを経時的に収集し行動変容を支援するためのICTツールとして、ウェアラブル/モバイル端末の利用、AIの導入等が進んでいる。
 要約すると、(1)モバイルヘルスなど、健康医療情報の利活用システムは急速に変遷しており、予防/参加型医療へとパラダイムシフトしつつあること、(2)ゲノム・オミックス情報などのビッグデータはhigh-definition medicineの主要な指標であり、その臨床活用が始まりつつあることを概説した。

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