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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年11月25日 第137回成医会総会パネルディスカッション

「COVID-19克服に向けて」

司会:岡本愛光 教授 (産婦人科学講座)
   頴川 晋 教授 (泌尿器科学講座)

 本邦におけるCOVID―19感染の収束はまだ見通しが立たない状況であるが、この感染症を過剰に恐れるのではなく、ポイントを押さえた感染予防対策によって発症者や死亡者を抑制しつつ、経済活動を継続することが重要な課題となっている。この感染症について最新の国内外の情報や対策法、治療薬・ワクチンなどの知識を共有するため、泌尿器科学講座の穎川晋教授と産婦人科講座の岡本愛光進行のもと、パネルディスカッション「COVID―19克服に向けて」を開催した。
 まず、WHOの感染症危機管理シニアアドバイザーで本学出身の進藤奈邦子客員教授から世界の情勢について基調講演があった。続いて、感染症制御科で日本環境感染学会理事長でもある吉田正樹教授より日本の情勢について最新の情報を交えた講演があった。ウイルス学講座の近藤一博教授からは、治療薬およびワクチンについて、そして分子疫学研究部の浦島充佳教授からは疫学と危機管理の立場から講演を賜わった。
 進藤教授の講演では、世界の状況として、インドやブラジルの感染者数が増加傾向でアメリカは相変わらず多く、ヨーロッパも再び増加していること、WHOは日本のクラスター対策は各国の手本になると高い評価をしていること、今後の感染はウェーブでなくサージとして起こり、子供や若年層に広がり収拾が困難になる可能性があることが話された。そして今回のような人獣共通感染症は原因として飢餓、環境破壊、地球温暖化などがあげられ、今後も5―10年周期で発生する可能性が高く、ヒトと物資や空路で世界中に拡散して多くの経済的損失が生じる可能性について言及した。
 吉田教授からは、日本はProspectiveに加えRetrospectiveにも調査を行っていること、人口100万人当たりの死亡者数は11人と世界141位であること、次のインフルエンザ流行に備え、院内感染を予防しつつドライブスルー型やテント型での動線を確保し、電話予約などの導入により時間的、空間的分離を講ずることが重要であることや、抗ウイルスHEPAフィルター付きパーテーションの有用性について解説があった。
 近藤教授からは新型コロナウイルスの抗ウイルス薬のメカニズムやサイトカインストーム、不活化ワクチン、アデノウイルスベクターワクチン、メッセンジャーRNAワクチン、DNAワクチンなどについて、さらには副反応に対する情報提供や教育などの対応、整備の確立の重要性について解説があった。
 浦島教授は首相によるイベント延期・縮小要請や全国小中高校の臨時休校要請があっても多くの国民は異を唱えることなく受け入れられたのは、二月初めのダイヤモンド・プリンセス号が船ごと検疫された14日の間に、日本中で今後の感染リスクや対応についてじっくりと考え身構える(=awareness)ことができたからではないかと分析した。また、人口100万人当たりの救命救急センターの数と死亡率と負の相関関係があることについてもデータを示した。
 今回はオンデマンドでの形式のため、事前に質問をall user mailで募ったところ、数多くの質問があり、ディスカッションを有意義に進める助けとなった。
(岡本愛光記)

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