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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年11月25日 第137回成医会総会パネルディスカッション3

治療薬およびワクチンについて
ウイルス学講座教授 近藤一博

 COVID―19の治療薬としては、新型コロナウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬と、COVID―19の重症化の原因となる肺炎の治療薬が挙げられる。抗ウイルス薬は、現在、レムデシビルやアビガンが用いられているが、何れも他のウイルスのために開発された薬剤の転用であり、新型コロナウイルスに対して十分な効果がえられているとは言い難い。肺炎治療薬としては、サイトカインストームのような過剰な免疫反応を抑制する薬剤が主として用いられている。デキサメサゾンのようなステロイド剤や、アクテムラのような炎症性サイトカイン抑制薬が例として挙げられる。
 ワクチンは一般的に、抗体産生を目的とする不活化ワクチンと、キラーT細胞の誘導を目的とした弱毒生ワクチンが用いられている。新型コロナウイルスは、抗体によってウイルス増殖が促進される抗体依存性感染増強現象が生じる懸念があり、不活化ワクチンを利用することには不安がある。一方、弱毒生ワクチンは開発が難しく、現時点では開発されていない。
 これに代わって現在開発されているのは、アデノウイルスベクターやメッセンジャーRNAを利用したワクチンである。これらのワクチンは、原理的にキラーT細胞を誘導することが可能であるため、新型コロナウイルスに対する有効性が期待される。しかし、これらは原理的に、痛みや発熱の発生の可能性が高く、副反応には十分な覚悟をもって臨む必要がある。

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