トップページ

東京慈恵医科大学同窓会

最新情報


2020年11月25日 第137回成医会総会パネルディスカッション4

疫学と危機管理の立場から
分子疫学研究部教授 浦島充佳

 危機管理の難しいところは初期情報が限られていることである。しかし、初期の段階で大胆な対策をとるか否かで、その結果は大きく変わってくる。
 1月26日(日)中国当局が今日記者会見で「潜伏期間中に感染する」点を公表した。同日夜、民放番組に出演し、以下のコメントをした。
 SARSでは、発熱など発症してから4〜5日して急に感染力を増す。そのため発症後3日以内に入院させ個室に隔離し、医療従事者も防護策を講じれば、理論上これを封じ込めることができる。
 実際、平成14年11月から発生したこの感染症は世界で約8000人の患者と800人の死者を出したが平成15年7月に終息した。SARSの場合、風邪症状だけで終わるような不顕性感染はなく、感染したら全員が肺炎を発症すると考えられた。そのため症状のある人にだけ注意を払っていればよかった。しかし、新型コロナで「潜伏期間中にも感染させる」ことが事実であるとすると、診断がついたときには既に複数人に感染させてしまっているわけで、SARSと同じ対策で封じ込めることは理論上不可能である。
 後に発症2〜3日前からPCR検査が陽性になり、かつ感染力をもつことがエビデンスとして示された。WHOもPCR検査を推奨した。我々は47都道府県と173か国のデータ解析し、PCR検査を拡充し、その陽性率を4〜5%未満などに抑えた県や国では人口比死亡率が低い傾向にあることを突き止め論文発表した。

top