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東京慈恵医科大学同窓会

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2024年08月25日 「須く、一歩進む」公演にあたり
LiveUpCapsules代表 村田 裕子


 私が主宰する、LiveUpCapsules(ライブアップカプセルズ)という劇団では、2022年夏に、北里柴三郎とその弟子たちを登場人物にした舞台「雷を振れり」を上演しました。
 その公演にあたり、伝染病の研究の実験方法を知る必要がありました。どういう実験器具があるのか、それをどのように使うのかも分からない、知識が全くないところからのスタートです。
 そこで、東京慈恵会医科大学の先生方に教えて頂くことになりました。劇団員が、東京慈恵会医科大学の授業のロールプレイで患者役をやっていたことがご縁でした。
 初めて貴校にお伺いした日の事を覚えています。多くの先生方から、研究方法について、器具の扱い方・シャーレの持ち方・消毒の仕方、また、北里柴三郎の伝染病研究所と東京慈恵会医科大学の地理的位置やその交流、等々、大変丁寧に教えて頂きました。
 名もなき外部の我々にどの先生方も親切でお優しく、大変感動したことを覚えています。
 そしてもう一つ、忘れられないことがあります。一人のお若い先生に、なぜ研究者の道を選んだのかと質問したところ、誰も踏み入れてない未知の世界への探求と、それにより多くの人が新しい方法で治療できる可能性への強い志のお話しをお聞きしました。
 今思えば、高木兼寛先生に通じる、東京慈恵会医科大学の皆様の強い志に触れたのだと思います。一緒に伺った劇団員の男性が、心を打たれて目に涙をためていました。
 2022年8月はコロナ感染拡大の為、役者・関係者一同全員で直接お話を伺うことは出来ませんでしたが、代表として伺った私と劇団員に教えて頂いた知識や思いを皆に伝え、説得力ある舞台を創ることが出来、多くのお客様に大変好評を得ることが出来ました。
 その舞台のチラシの撮影にも貴校の校舎をお借りし、多大なご協力をいただきました。
 その「雷を振れり」では北里柴三郎と東京大学医学部の因縁として、「脚気論争」を短い一つのシーンで描いています。舞台終了後、貴校に御礼に伺った際、「脚気論争」は東京慈恵会医科大学の学祖が大いに関係しているとお聞きしました。
 お叱りを受けることを覚悟で申しますと、私はその時まで、高木兼寛先生の事を知らなかったのです。そしてその事実に、我ながら大変驚きました。
 一つの舞台の創作にあたり当時の日本の医療事情を調べたにも関わらず、「脚気」について耳にしたのは陸軍の失策・森鴎外の失態、という話ばかりで、なぜ大事な正しき道を示した人の話しを知らないのか。
 そこから本を読み漁り、貴重な資料をお借りし、高木先生の偉業を知ることとなります。
 江戸から明治という時代の大転換の時に、異国の地で驚異の成績を上げ、日本の貧しき者たちの為の医療をと邁進する。自分が正しいと信じた道を揺るぎなく追及し続ける、なんと志の高いことか。その高木兼寛先生の雄姿を何としてもお届けしたい、知って欲しい、いや私が観たい。そう思い舞台化することとなりました。
 公演の際には、東京慈恵会医科大学のご後援、また、東京慈恵会医科大学同窓会の皆様の多大なご支援を頂きました。お忙しい中、稽古場へいらしていただき所作についてご指導を頂きました。また皆様がお持ちのものを小道具としてお借りしました。
 もし舞台が皆様の楽しいお時間と成り得たとしたら、それは役者・関係者一同、また東京慈恵会医科大学の皆様、同窓会の皆様のお力添え、そして高木兼寛先生の志の賜物だと思います。本当に有難うございます。

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