東京慈恵医科大学同窓会
最新情報2024年10月25日 中島大輝君(平27)2024日本アレルギー学会
サノフィ優秀論文賞一般部門受賞
一般社団法人日本アレルギー学会の2024年度サノフィ優秀論文賞一般部門を耳鼻咽喉科学講座の中島大輝君が受賞した。「サノフィ優秀論文賞」は、アトピー性皮膚炎・喘息・副鼻腔炎を対象疾患領域とした研究教育において、優れた業績を挙げている研究者、診療科・研究室が表彰され、更なる発展を支援する目的で副賞が授与される制度である。日本アレルギー学会は、アレルギー学の中心となる会員数一万人以上の全科横断的な学会であり、本学会での受賞は非常に価値のあるものといえる。
受賞論文のタイトルは“Dupilumab im-proves eosinophi-lic otitis media associated with eosinophilic chr-onic rhinosinusi-tis.”であり、令和五年のAllergology In-ternational誌に掲載されている。本研究の対象疾患である好酸球性中耳炎は、指定難病である好酸球性副鼻腔炎の重症例に合併する事が多い疾患である。中耳に多数の好酸球浸潤を含む膠状貯留液を認める事が特徴であり、感音難聴を来たし急速に失聴に進行する事もある。治療は全身または局所のステロイドが第一選択だが、抵抗性の事も多く、副作用の多いステロイドに替わる治療選択肢が望まれていた。また好酸球性中耳炎は、2型サイトカイン優位の疾患と考えられており、デュピルマブの有効性が期待されている。そこで本論文では、重症の好酸球性副鼻腔炎に合併した好酸球性中耳炎に対するデュピルマブの治療効果を検討した。デュピルマブにより、悪化頻度・全身性ステロイド使用量・重症度スコアおよび側頭骨CTスコアが有意に改善を認め、デュピルマブの有効性が示唆される所見であった。好酸球性中耳炎に対する新たな治療法の可能性が見出された新規性が評価され、受賞に至ったものと考えられる。今回の受賞を機に、更なる研究成果の発展と実臨床への応用、並びに中島君の更なる飛躍を大いに期待したい。
(平6・松脇由典記)