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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年11月25日 第137回成医会総会特別企画1

遺伝子治療法の最近の進歩
―遺伝性疾患を中心に―
総合医科学研究センター長 大橋 十也

 遺伝子治療は1989年に初めてヒトに対して行われて以来、現在まで3000近い臨床試験が行われてきた。当初は、過剰ともいえる遺伝子治療への期待により多くの臨床試験が行われた。しかしながら、基盤技術が未熟であり、期待ほどの効果が得られなかった。追い打ちをかけるように、1999年には倫理的にも医学的にも不適切な肝臓の酵素の先天異常への遺伝子治療で死亡者が出たり、2002年には遺伝子導入ベクターのゲノムへのランダムな挿入により近傍のがん遺伝子が活性化し白血病が発症したりするなど、遺伝子治療にとって逆風となる事象が相次ぎ、急速に、その開発にブレーキがかかった。
 しかしながら、遺伝子治療研究者の地道な努力により、遺伝子導入ベクターである、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクターが改良され、特に遺伝性疾患では昨今、承認薬が相次いでいる。特にエポックメーキングであったのは2012年先進国では初めてリポプロテインリパーゼ欠損症の遺伝子治療製品であるグリベラ(アデノ随伴ウイルスベクター)がEUで承認されたことである。その後、現在まで、がんなどを含み九つの疾患に対しての遺伝子治療製品が承認され、今後も多くの疾患に対しての遺伝子治療製品が承認される見込みである。本学も、それらに対応するためJIKEI細胞調製施設(JIKEI-CPF)を新外来棟に設置した。ゲノム解析技術の進歩とも相まって、今後、本学がゲノム医療の中心施設としての活躍が期待される。

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