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東京慈恵医科大学同窓会

最新情報


2019年09月25日 大学講座シリーズ
「産婦人科学講座」
講座担当教授 岡本 愛光


【沿革】
 東京慈恵会医科大学産婦人科学講座は、1903(明治36)年、初代教授である樋口繁次先生により開講されました。以後小島譲教授、樋口一成教授、渡辺行正教授、細川勉教授、蜂屋祥一教授、寺島芳輝教授、田中忠夫教授と引き継がれ、2012(平成24)年4月より岡本愛光(昭61)が就任し現在に至ります。その歴史は116年に至り、現在の医局員数は163名となります。

【診療体制】
 令和元年現在、附属病院に39人、葛飾医療センターに12人、第3病院に14人、柏病院17人のスタッフを配属し、産科、婦人科、生殖(不妊症)、女性医学の診療をしております。附属病院では産科、婦人科、生殖の3チームに分かれ、総合母子健康医療センターとウィメンズクリニックを中心として専門的な診療を行うと共に、研究、教育に励んでいます。令和2年1月に新設されるN棟においては、総合周産期母子医療センターの開設、および24時間対応無痛分娩の開始に向け小児科、麻酔科と準備を進めています。
 また、成育医療センターでは周産期、国立がん研究センター東病院においては婦人科腫瘍に特化した高次医療を行い、町田市民病院、厚木市立病院、茅ケ崎市立病院、川口医療センター、深谷赤十字病院、東千葉医療センター、太田総合病院、汐見台病院、佐々木研究所付属杏雲堂病院、谷津保険病院、恵愛生殖医療医院、獨協医大埼玉医療センター、オーククリニックフォーミズ病院などの関連病院においては地域医療に携わっております。

【産科】
 2018年度の分娩数は附属病院で854件(帝王切開率32%)、附属4病院合計で1897件(同33%)となっています。また、現在附属病院では麻酔科の協力の下、無痛分娩に力を入れており、年々増加しております。2018年度には全分娩数の31%に当たる272件が無痛分娩件で行われております。現在無痛分娩は日中のみの対応となっておりますが、今後は24時間体制で対応すべく準備を進めております。母体搬送の受け入れ数は54件となっております。胎児診断・ハイリスク妊娠外来、骨盤位(逆子)に対する外回転外来、NIPT外来などの専門外来も開設しております。

【婦人科】
 婦人科では、ガイドラインに沿い婦人科良性腫瘍、悪性腫瘍の治療を中心に行っています。近年では更年期障害を中心として女性のライフステージに応じた健康管理を行う女性医学にも力を入れています。2018年度の婦人科手術件数は附属病院827件、附属4病院合計で2587件となっております。低侵襲手術チーム(JMIST)を中心として腹腔鏡下手術を積極的に導入し、良性腫瘍のみならず悪性腫瘍にも適応を拡大しております。2018年度に附属病院では274件(うち悪性腫瘍が37件)の腹腔鏡下手術を行っています。治療方針は最新の知見を基にカンファレンスを通じて決定しております。また、国内外の臨床試験や治験に積極的に参加する事で新規治療の開発に取り組んでいます。一方、緩和ケアチームの協力のもと、悪性腫瘍患者に対する早期からの緩和医療を導入し、全人的なケアに努めております。更に、近年話題となっている遺伝性腫瘍に対しては腫瘍・遺伝カウンセリング(HBOC外来)を開設し、今後はゲノム医療の適応拡大に向け遺伝子パネル検査の導入などに向けて準備を進めております。その他、婦人科腹腔鏡下手術外来、子宮内膜症外来、女性医学外来などの専門外来も開設しています。

【生殖】
 生殖チームでは、一般不妊症治療に加え、附属病院の地理的な特性を生かし高齢患者や合併症を有する不妊症患者の治療を行っております。2018年度の採卵数は192周期、胚移植は216周期となっております。近年では乳がんなどの悪性腫瘍で化学療法を行う女性患者の卵巣を摘出、凍結保存し、悪性腫瘍に対する治療終了後に体内に再移植して妊娠、出産を目指す癌生殖医療も導入しております。専門外来としては不育症外来を開設しております。

【研究】
 婦人科では当講座の伝統である卵巣癌の研究を中心に、癌の発生メカニズムや新規治療法の開発に取り組んでいます。最近では、日本人に多い卵巣明細胞癌などで見られるARID1A遺伝子変異を有する癌における代謝を標的とした新規治療法についての研究(国立がん研究センターとの共同研究)の成果がCan-cer Cellに掲載され、プレスリリースも行なわれました。この研究は、多癌種にわたる新規治療の開発に繋がる可能性があり注目を集めています。また、卵巣癌に対する最適な治療法を探索するための臨床研究を海外施設も含めた多施設共同研究として行っております。産科領域ではIPS細胞を用いた先天異常疾患の治療、次世代シーケンサーを用いた産科疾患におけるゲノム解析、生殖領域においては適切な癌生殖医療の導入を目的とした若年女性における卵巣機能の評価を行っています。2018年度における学位取得者は3名、大学院生4名、国内留学者7名、海外留学者は3名となっています。
 本学産婦人科学講座は産科、婦人科、生殖、女性医学の四本柱とする診療と研究を着実に歩むことで更なる飛躍に繋がると確信しております。

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