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東京慈恵医科大学同窓会

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2019年11月25日 第136回成医会総会パネルディスカッション
「臨床研究法の現状と展望」
籾山俊彦 教授 (薬理学講座)
堀 誠治 教授 (感染制御科)


 籾山俊彦教授(薬理学講座、私立医科大学協会研究倫理委員)は、本パネルディスカッションのイントロダクションとして、私立医科大学協会研究倫理委員会委員として、全国の私立医科大学・医学部の基礎系、臨床系の教員、大学院生の、臨床研究法に対する認識の程度に関するアンケート結果を報告した。
 千田実准教授(臨床研究支援センター)は、臨床研究法に登場する用語の厳密な定義に基づき、臨床研究法における臨床研究と一般的に使われる臨床研究という言葉の相違、特定臨床研究に該当する研究の内容につき解説した。その上で見えてきた課題として、実施のための手続きが煩雑なために、臨床研究に該当することを避け、観察研究に流れる傾向があることを指摘した。臨床研究の推進に逆行する傾向であり、克服する対処法として、開始後の支援、管理、そのために支援センターの体制充実が不可欠であることを力説した。
 保野慎治准教授(臨床研究支援センター)は、臨床研究法にとらわれずに最近の研究動向を概説し、たとえばAMEDの次期方向性を検討することによって国の考えが見えることを述べ、さらに、国の科学技術イノベーション政策に関する調査、分析、提案を中立的な立場に立って行う組織であるJSTの研究開発戦略センターについて解説し、ビッグデータを活用した大型研究、特に、全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出す社会の実現を目指すSociety5.0について解説を行なった。
 志賀剛教授(臨床薬理学)は、臨床研究を真に適切に評価する必要性を強調し、バゾプレッシンV2受容体アンタゴニストを例に挙げて、真に生命予後に効果のあることを示すエヴィデンスとは何かを論じた。また、日本から公表される研究論文の現状、問題点を鋭く喝破し、利益相反、メーカーの広告、医師の裁量等の問題点に言及し、科学者として厳しい眼で評価することの必要性を説いた。そして不必要な臨床研究を実施させないことによって被験者を保護することの重要性を力説した。フロアから多くの質問、コメントがあり、議論が盛り上がった。
 最後に堀誠治教授(感染制御科)は、以上の論点をふまえて、では実際に本学ではどのように実施したらよいのか?という観点から解説を行なった。たとえば、従来の“ヒトを対象とする医学研究に関する倫理指針”も有効であり、臨床研究法との二本立てであることを確認し、本学での申請、審査、手数料(学内および学外からの相違)、教育研修の実際等について解説した。
 最終日夕刻、しかも台風接近の中で議論を展開してくれた演者、参加者に感謝する。
(籾山俊彦記)

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