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東京慈恵医科大学同窓会

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2020年03月25日 卒業式式辞
東京慈恵会医科大学 学長 松藤 千弥


 本日、学士の学位を手にした皆さん、ご卒業おめでとうございます。医学科6年生と看護学科4年生の全員が揃って卒業されるのは素晴らしいことです。学生の自主性に多くを求める、本学の厳しい教育課程を完遂した努力を讃えます。
 今回は新型コロナウイルス感染の拡大のため、卒業式を通常通り行うことができません。ここに座ることができなかった卒業生もいます。式を楽しみにされていたご家族、関係者の皆様に参列いただけなかったことは、まことに残念で申し訳ありませんが、どうかご理解いただけますようお願いいたします。私自身も卒業生一人一人に学位記を渡せないのは大変残念であります。
 世界が現在直面している事態は、皆さんがこれから担うことになる医学と医療が、人々の命だけでなく、人々がいつも通りの生活を送るためにいかに大きな役割を果たしているかを、改めて示しました。感染症は近代医学が最初に挑んだ難敵であり、医学はこの戦いに完全勝利したかのように思われましたが、そうではなかったのです。対応する医療者の命が脅かされるという意味でも、これは戦いです。今、医学者・医療者はそれぞれの持ち場で、この病気を克服しようと献身的に、懸命に働いています。皆さんはその姿を、この制約の多い卒業式とともに、永く記憶してくれることでしょう。
 皆さんが入学したとき、私は守るべき3つのことをお話ししました。その一つが、志を高く保って成長し続けるということでした。卒業する皆さんには、改めてこの一点を送ります。今の状況に合わせて言い換えれば、待ち受ける不透明な未来に対処する覚悟を決め、そのために自分自身の力を磨き続けて欲しいということです。未来の不透明さは、医学の急速な進歩、地域と先端医療の二極化といった、医学・医療の問題に加え、日本の社会が抱える問題、そして予測困難な事態が入り交じったものです。皆さんは本学で学んだ者として、専門的知識を動員し、リーダーシップを発揮し、勇気を持って、そのような未来を切り拓いていくことが期待されています。そのために、今日までの学修成果を礎に、さらに研鑽し成長する必要があります。成長は若いときほど早いことに注意を払ってください。社会に出た最初の1年間は特に大切です。そしてもちろん、自分を磨く間も、本学で学んだ者らしく、相手の気持ちを思いやり、謙虚さを忘れないで欲しいのです。
 本日は、社会に漕ぎ出す皆さんに私が最も伝えたいことをお話ししました。皆さんの門出を改めて祝福して、私の式辞といたします。

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