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東京慈恵医科大学同窓会

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2021年04月25日 入学式祝辞
学校法人慈恵大学 理事長 栗原 敏


 医学科110名、看護学科60名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。我々、教職員一同、新入生の皆さんを歓迎いたします。医学・医療を目指す新しい仲間を迎え、大変嬉しく思います。現在、世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大しており、日本では第3波が落ち着いたかに見えましたが、2度の緊急事態宣言解除後の人出の増加による患者数の増加や、変異ウイルスの出現など、油断できない状況です。そのような困難な状況の中、皆さんは医師、医学研究者、看護師、保健師、あるいは看護学研究者などを目指して、本学に入学されました。これから医学科は6年間、看護学科は4年間それぞれの課程で学ぶことになりますが、自分は何を求めて本学に入学したのか、常に自分自身に問いかけて研鑽して下さい。
 保護者の皆様には、ご子弟のご入学おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。直接お目にかかってお話しできないのは大変残念ですが、致し方ありません。医学科、看護学科ともに、これからの勉学には学生諸君の学ぶという積極的な態度が求められます。保護者の皆様には、学修や生活上でのご心配は絶えないと思いますが、学生諸君の成長を温かく見守って頂きたいと思います。子離れは難しい問題ですが、学生諸君は自立して生きていく力を養う必要があります。
 皆さんは、それぞれ目標を定めて、医学科、看護学科に入学されたと思いますが、これからの学修の中で、自分自身がどうありたいのかという皆さん自身の“思い”を大切にすることが肝要だと思います。京セラを創立し、その後、KDDIを設立、また、日本航空の再建に注力した稲盛和夫さんと、ある会議でご一緒したことがありますが、稲盛さんは、自分がどうなりたいかという心、“思い”が大切だと言っています。常に思うことがすべての出発点となるので、その気持ちを大切にすることと、思いがなければ何事も成就しないと言われています。その時、大切なことは、自分自身の利益だけを考えるのではなく、他人にも手を差し伸べたいと思う、“利他の心”だと言われているのです。医師も看護師も、医学研究者も看護学研究者も、目指しているところが自分自身のためだけでなく、他人を思いやる利他の気持ちを忘れてはならないということです。これは大変難しいことですが、折に触れ、自分自身を見つめ、自分は何をしようとしているのか、何処を目指しているのか、常に確かめ、自分の心の点検を忘れてはならないということだと思います。
 現在、新型コロナウイルス感染症が大きな社会問題になっていますが、この感染症の予防には、人々が協力してお互いを思い、助け合うことが必要です。私の大学の同級生で、川崎市の健康安全研究所長として活躍している岡部信彦先生は、手指消毒など感染対策を心掛けることは、自分自身のためだけでなく、他人へのエチケットだと言っています。新型コロナウイルス感染症は、日常生活や人間社会の在り方などに対して多くの警鐘を鳴らしています。行き過ぎたグローバル化、生態系の破壊などがこの感染症の拡大に関係しているという識者の意見があり、私たちの社会の在り方が問われています。臓器や細胞、あるいは遺伝子の医学を学び研究するだけでなく、人と社会との関わりを考えることが、より一層、医療者に求められているのです。医学・医療を学ぶ中で、広い視野に立って考えることが出来る力を養うことは、医学科や看護学科の皆さんにとって極めて大切です。
 学祖の遺訓とされている建学の精神、“病気を診ずして病人を診よ”は、病に悩む人を良く理解し寄り添えということです。病んでいる人を診るためには、臓器の医学・医療だけでなく、目の前の患者さんの心を理解することが求められていることを示唆しているのです。そのためにも、医学や看護学の専門を学ぶと共に、幅広い教養を身につけて頂きたいとお願いします。
 また、皆さん自身の人格を磨くには、先輩、級友、後輩など多くの人との出会いが極めて重要だと思います。現在、人と人との接触が制限されていますが、人との出会いによって皆さん自身が変わり、人格が磨かれるものと思います。皆さんの将来を決めるような人との出会いが、これからあることでしょう。優れた仕事をした先人は、必ず良き師、先輩、友人などと出会っています。
 私は慈恵医大を昭和46年(1971年)に卒業して、今年で50年になりますが、これまで、恩師や級友を始め実に多くの方々に導かれ、支えられてきました。人は一人では生きていけません。どうか皆さんはこれから出会う人を大切にして頂きたいとお願いします。良い人生とは良い人との出会いだという言葉があります。良い人との出会いは皆さんの人生を豊かにします。
 皆さんは医学や看護学を学ぶのに十分な学力があると認められ、本学への入学が許可されましたが、これからは皆さん自身が自らを鍛えるという強い気持ちで大学生活を送って下さい。今日にベストを尽くすことによって、新たな展望が見えてくるに違いありません。実り豊かな学生生活となることを願って、お祝いの言葉といたします。

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