トップページ

東京慈恵医科大学同窓会

最新情報


2021年09月25日 シンポジウム

「コロナからただでは起きない」
司会 竹森 重(分子生理学講座)
   繁田雅弘(精神医学講座)

 東日本大震災からの復興を世界に示す予定だったオリンピック・パラリンピックが、コロナ禍の大打撃を歴史に残す大会にもなった。東日本大震災後、各地に残されていた過去の津波の警鐘が発掘・再認識され、震災を経験した我々の世代が未来に何を遺すべきかが議論された。このコロナ禍についても、過去の新興感染症や感染症の広域大流行を経験してきた社会の歴史を発掘・再認識して俯瞰する機会とし、コロナ禍が経済・医療・教育・文化・生活に与えている大打撃から私たちが学んだものを未来に正しく遺す営みに繋げたい。その思いでこのシンポジウムを企画した。
 シンポジウムではまず「パンデミックと人間の在り方」 として国領校人間科学教室の三崎和志教授が、人間と人間、人間と社会のあり方に関してコロナ禍が国内外に誘発した根源的反省・思考の交換と共有を呼びかける。続いて国領校外国語教室の鈴木克己教授が「パンデミックについて文化の視点から」として人間社会が悪疫にどのように揺さぶられて動かされてきたかを概観し、群衆の心理に目を向ける。これを受けて国領校人間科学教室の小澤隆一教授が「パンデミックと(現代)社会」として、複雑化する社会との相互作用という観点から医学・医療の動きを捉える。また阿保順子長野県立看護大学名誉教授/北海道医療大学名誉教授が、医療職とくに看護師への称賛の影にこのコロナ禍が再び顕在化させた偏見や差別を語り、今度こそ偏見と差別を昇華させるための道筋を「偏見を超えた社会へ」として探る。最後に、本学卒業の占部(宇沢)まり宇沢国際学館代表取締役/日本メメント・モリ協会代表理事が「社会的共通資本としての医療〜COVID―19から見えてきたもの」と題して世界的経済学者の宇沢弘文が追い求めた経済と医療のあり方を、コロナ禍が浮き彫りにした問題点に照らしながら語る。
 シンポジウム企画者は各シンポジストとのやり取りからこのような展開を現段階で想像している。しかし各シンポジストが収録当日に向けて意欲的な準備を進めていることから、さらに踏み込んだ議論になるであろう。コロナ禍からの学びを未来に遺す確かな礎になると期待している。
(分子生理学講座 竹森 重記)

top