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東京慈恵医科大学同窓会

最新情報


2021年10月25日 第75回同窓会定期支部長会議における大学の事業報告

学校法人慈恵大学 理事長 栗原 敏
東京慈恵会医科大学 学長 松藤 千弥
東京慈恵会医科大学附属病院 院長 井田 博幸

【令和三年十月二日(土)第七十五回定期支部長会議を開催する予定でありましたが、新型コロナウイルス感染症防止のため中止となりました。つきましては書面にて、栗原敏理事長、松藤千弥学長、井田博幸附属病院長、安保雅博生涯学習センター長、谷口郁夫専務理事、山本裕康常務理事からご報告いただきましたので掲載いたします。】

 同窓会支部長、並びに学術連絡委員の皆様には、日頃、大学の活動にご理解とご支援を頂き、心から感謝申し上げます。新型コロナウイルス感染症は第5波を迎え、その後、感染者数は減少しつつあります。しかし、重症例や家族内感染が増えていることなど、油断できない状況です。附属病院は、日常診療を行い、来院される患者さんにご迷惑をかけることなく、新型コロナウイルス感染症の患者さんを受け入れて適切に対応できるよう努めています。
 大学全体に関する事項は栗原敏理事長が、教育研究に関する事項は松藤千弥学長が、病院に関する事項は井田博幸附属病院長が、生涯学習センターに関する事項は安保雅博センター長が、寄附に関しては谷口郁夫財務担当専務理事が、学術連絡委員会に関しては山本裕康常務理事がそれぞれご報告いたします。

<理事長報告>

1.大学運営の件
 大学は新型コロナウイルス感染症の拡大によって、診療、教育・研究、中長期事業計画、財務など大学の運営が大きな影響を受けている。特に、病院や大学でコロナ感染者が発生すると、日常診療や教育が停滞し、その結果、財務にも大きな影響が出るので、感染対策部に感染情報が入り次第、情報を共有し素早く対処している。入院患者は入院前検査(PCRは全員、胸部CT検査はワクチン未接種者や急患などを対象に実施している)を行い、院内にウイルスが持ち込まれないように検査を徹底している。
 会議、講習会、セミナーなどはオンライン開催が多くなり、この傾向は今後も続くと思われる。教育は対面授業が少なくなりオンライン授業が増えた。オンライン授業のための資料作成に多くの時間を費やしており、教員の負担が増加している。臨床実習は、学生、教職員の感染対策を徹底した上で行っている。OSCEは学生、教員の感染対策だけでなく、模擬患者の感染予防対策にも十分配慮して実施している。政府が発出する緊急事態宣言と共に、大学は独自の警戒レベルを設けて発出しており、教職員の負担が増えている
 本学の医師・看護師は、行政などの要請によるワクチン接種に協力している。港区から旧外来棟を港区医師会のワクチン接種会場に借用したい旨の要請があったので了承した。オリンピック・パラリンピックは終了したが、本学は医師と看護師を、馬事公苑会場と有明会場に派遣して医療支援に協力した。最近では、都が運営する酸素ステーションへの医師派遣にも協力している。このように、大学、附属病院が一体となって、この困難な状況に対応している。

2.令和2年度決算報告
 令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、大学と附属病院を取り巻く環境は例年と異なり、大変厳しい状況であった。そのため、決算も大きな影響を受けた。令和2年度の決算は、収入の合計1,121.4億円(予算比マイナス32.0億円)、支出合計1,062.1億円(予算比マイナス64.7億円)で、基本金組入れ前当年度収支差額(利益)は59.3億円(予算比プラス32.7億円)であった。令和2年度は、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、病院は一般診療を継続して来院される患者に対応すると同時に、コロナ患者の受け入れ態勢を整えて対応した。感染拡大によって、初診、救急患者の受け入れ停止、待機手術の延期、感染病床の確保による診療制限を行った。また、患者の受診行動に変化が見られ、受診が控えられたので、4病院合計で、一日平均外来患者数5,911人(前期比マイナス978人)、1日平均入院患者数1,824人(前期比マイナス441人)、手術件数27,324件(前期比マイナス7,448件)と、大幅に減少した。この結果、医療収入は900.7億円(予算比マイナス146.2億円)、医療収支529.1億円(予算比マイナス110.9億円)となった。このような財務状況は、令和2年3月下旬に新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って予想されていたので、対応策として、賞与の削減(約10億円)や第三病院建築計画の1年延期(6.5億円)を行った。それに加えて、不急の投資を延期するなどして対応した。
 その後、政府の各種感染対策補助金(病床確保支援、医療従事者特殊勤務手当、宿泊先確保、医療施設・設備整備補助など)が決まり、最終的に110.6億円の補助金が支給された。その結果、令和2年度の当年度収支差額(利益)は59.3億円と予算を上回る結果となった。感染対策補助金がなければ収支差額はマイナス51.3億円(予算比マイナス77.9億円)の赤字決算となり、厳しい決算結果であったものと考えられる。令和3年度に入ってからも新型コロナウイルス感染症は収束の気配が見られず、感染対策に必要な経費は今後も増え、財務を圧迫することが予想される。

3.第三病院・国領校舎の建て替え計画の件
 第三病院の建て替え計画は、新型コロナウイルス感染症の影響で一年間延期になったが、その後、計画は再開され基本設計が終了している。地域に密着した病院、感染症に対応できる病院として計画されている。

4.大学基準協会の認証評価受審などへの準備など
 日本看護学教育評価機構の看護学教育評価(令和3年度)、日本医学教育評価機構の医学教育分野別評価(令和4年度)の受審を控えておりそれぞれの評価に対応した規則、規程の改定、整備が行われている。また、7年ごとの大学基準協会の認証評価を令和5年度に受審する予定になっている。大学基準協会の認証評価の中では、大学の内部質保証制度が重視されており、内部質保証に関する規則制定の準備が内部質保証推進委員会で進行している。

5.学長選任等規則の改定とそれに伴う大学規則の改定
 令和五年度の大学基準協会の認証評価の受審に向けて、学長選任等規則、それに関連した規則の改定を行っている。すでに、学長選任等規則は改定され、学長の選任は、選考委員会が学長候補者を募り、選考委員会が学長候補者を理事会に推薦する方式に変更された。附属病院長候補者の選任はすでに選考委員会方式になっており、本年中に、学長候補者と病院長候補者が選任される予定である。

6.働き方改革への対応
 政府が進めている働き方改革に対応するために、出退勤管理を始めており、今後、教職員の具体的な時間管理方法を検討することになる。勤務時間の上限が定められること、大学での勤務時間と学外での勤務時間の総和が労働時間として算定されること、宿日直回数の制限などに対応できる規則を策定することが求められ、準備している。

7.医療マネジメント講座の開催
 本学では医療マネジメントスキルの高い人材育成を行うために、平成30年4月から医療マネジメント講座を開講している。本年度の受講者は47名(内、臨床系教員4名)であった。新型コロナウイルス感染症の影響で、Zoomを併用して開講した。昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて休講した。現在までの累計受講者総数は157名である。

8.スタッフ・ディベロップメント(SD)実行委員会主催の研修会
 大学運営に関する知識・技能を修得させ、その能力と資質を向上させるために、研修の機会を設けて、スタッフ・ディベロップメント(SD)活動を推進することになり、実行委員会が発足された。2021年8月2日に第一回SD研修会が開催された。参加者は240名であった。

9.ういケアみなとに関する報告
 今年の4月から8月までの相談件数は116件(前年同期比でプラス34件)であり、順調に増加している。セミナーやイベントは、コロナ禍の中でも感染対策を徹底して開催し、参加者から好評を得ている。8月28日には、儀賀理暁教授(埼玉医大総合医療センター・緩和医療科)の講演会が開催されるなど、活発に活動している。

10.慈恵看護教育将来計画委員会の発足
 慈恵の看護師育成は、看護学科、看護専門学校(慈恵看護専門学校、第三看護専門学校、柏看護専門学校)で行われている。現在、看護大学は280校を超え、昨今の少子社会にあって、看護専門学校志願者が減少し、大学志願者が増加している社会的背景を考えると、本学の看護教育体制を熟慮して、看護専門学校の在り方、看護学科の将来像、本学附属病院を支える看護人材の育成と配置を検討することは喫緊の課題であると考える。そこで、慈恵看護教育将来計画委員会を立ち上げて検討することになった。委員長は盒饗Щ厖事で、看護専門学校教員、看護学科教員、山本常務理事、学事部長、慈恵看護専門学校事務長で構成されている。

<学長報告>

1.教育に対する新型コロナウイルス感染症の影響
 新型コロナウイルス感染症の流行下2年目となる今年度は、医学科・看護学科ともに、講義はeラーニングシステムやZoomを用いた遠隔授業を原則とし、登校授業の大部分は実習や演習に充てている。感染の状況に影響を受けることがあるが、学内実習と教育協力病院における臨床実習は概ね実施できている。定期試験や共用試験も、感染対策に留意して実施している。ただし、学生同士や学生・教員間の対面コミュニケーションが例年に比べて制限されている現状である。なお、海外臨床実習の派遣と受け入れ、および協定校との交換留学は、今年度も再開できない見込みである。

2.学生生活への新型コロナウイルス感染症の影響
 部活動は昨年の春休み以来、練習、試合ともに禁止されており、学生は新入生の勧誘やミーティングをオンラインで工夫しながら行ってきた。本年9月中旬以降の感染の縮小傾向を踏まえ、学生部長と学生会および各部活動の間で活動再開に向けた話し合いが始まっている。
 経済的に困窮している学生に対しては、国の一部補助を受けた授業料の減免、医学科保護者会にもご協力いただいている奨学金制度の拡充、および公的機関による修学支援新制度により支援をしている。

3.学事関連行事
 今春の医学部卒業式は3月6日に、今年度の医学部入学式は4月8日に、それぞれ規模を縮小して挙行した。また、昨年度入学式が中止となった2年生のために、一年遅れの入学式を4月9日に挙行した。今年度の学生会主催新入生歓迎会、京都府立医科大学との定期戦は中止とした。両学科オープンキャンパスは、動画配信やZoomを用いた個別相談会などのオンライン形式で実施した。10月の慈恵祭は、新橋祭(医学科)とファブール祭(看護学科)に分かれて、オンラインで開催する予定である。

4.共用試験の法制化
 公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構が実施する医学科の臨床実習前共用試験(知識を評価するCBT、および技能・態度を評価する臨床実習前OSCE)は、医療法の一部を改正する法律(令和3年5月28日公布)によって法制化され、臨床実習中の医学生の医行為に法的な裏付けがなされることになった。今後、臨床実習後OSCE(Post-CC OSCE)の位置付けや、共用試験と医師国家試験の関係などが、卒前・卒後の医学教育のグランドデザインを含めて議論される見通しである。

5.新カリキュラムと外部評価の受審準備
 医学科、看護学科とも、2022年度より導入する新カリキュラムの作成を進めている。医学科ではアウトカム基盤型教育の確立、看護学科では新たな社会に必要な能力の涵養と指定規則変更への対応を主目的とし、さらにSociety5.0時代に活躍する人材育成のために、遠隔授業を始めとした情報通信技術を活用する。これと並行して、両学科はそれぞれ2021年度の看護学教育評価、2022年度の医学教育分野別評価を受審する。さらに大学全体として、2023年度の大学基準協会による機関別認証評価受審に向けて準備を進めている。これらを通じて、コロナ後の教育を最適化する取り組みを進める。

6.入学試験の実施状況
 今春の大学入学者選抜は、国公立大学等における共通テスト導入などの高大接続改革が行われ、同時に新型コロナウイルス感染症による大きな影響を受けた。本学の医学科・看護学科の入学試験も、感染対策の徹底、試験会場の追加確保、追試験の実施などに追われた。医学科では入試日程の変更(約一週間の後ろ倒し)、看護学科では指定校推薦入試の導入が行われた。志願者数は両学科とも全国的傾向と同様にやや減少したが、試験は混乱無く実施され、無事に入学者を選抜した。なお、来春の入試は引き続き感染対策を強化して実施し、医学科においては東京都地域枠入試(定員5名)が終了し、入学定員が105名となることが決まっている。

7.大学院
 今年度、新たに国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)と連携協定を締結した。これに基づき、医学系専攻博士課程に連携大学院として脳神経病態学講座を開設し、来春の学生受け入れに向けて準備を進めている。本学にとって、国立がん研究センターに続く二番目の連携大学院であり、精神医学分野を中心に、リハビリテーション医学、脳神経外科学、脳神経内科学、ウイルス学などの分野で連携が進むと期待される。
 大学院全体としては、医学系専攻、看護学専攻ともに遠隔授業を併用して、予定通りカリキュラムを進めている。ただし一部の学生は、新型コロナウイルス感染症の影響で研究の進捗に遅れをきたしている。

8.研究の状況
 本学の競争的研究費の獲得や発表論文数などの指標は、引き続き順調に伸びており、新型コロナウイルス感染症の影響は全体として小さいと考えられる。特に本学から発表された学術論文数は英文論文を中心に大きく増加しており、研究の質が向上していることがうかがえる。また、科研費の獲得や、研究成果を知的財産や産学連携に結びつける事例など、URA(リサーチ・アドミニストレーター)と呼ばれる研究支援人材が重点的に支援した分野で成果が現れている。昨年度設置した三つの産学連携講座は活発に活動しており、昨年度の脳神経外科を母体とした初の大学発ベンチャーに続き、今年度は耳鼻咽喉科の研究成果を活用する第二の大学発ベンチャーが起業した。一方、人への介入を行う臨床研究の多くが感染症の影響により遅延している。また、感染症に対応するために教育負担が増大し、研究の時間が十分にとれない教員も出ている。

<病院長報告>

1.2020年度の診療
 2020年度は慈恵大学附属4病院ともに病床を再編、検査体制を整備するなどしてCOVID-19に対応しました。またCOVID-19流行により診療制限や受診抑制が発生したため手術数、入院患者数、外来患者数が減少し、その結果、医療収入は減少しました(各病院のCOVID-19対応については慈大新聞7月号、診療実績の詳細については理事長報告をご覧頂ければ幸いです)。
 一方、2020年3月から2021年7月までの間、4病院全体で全国私立大学病院のトップである一、747名のCOVID-19陽性の入院患者さんを収容いたしました。また4病院ともにCOVID-19ワクチン接種を通して地域の方々に貢献しました。

2.患者さんのニーズに応える医療の推進
 慈恵大学病院ではロボット支援手術を2019年10月に泌尿器科から開始しました。その後、呼吸器外科・消化管外科・産婦人科・肝胆膵外科に診療科を拡大しています。PET―CTを設置してがん診療に役立てるとともにがん健診にも活用しています。腫瘍センターの活性化、遺伝診療部におけるコンパニオン診断、高機能の放射線治療機器の導入などによりがんの集学的治療を推進しています。ハイブリッド手術室を増設して高難度手術に対応しています。
 また以下の施設認定を受けました。2020年12月に母子医療センターが東京都総合周産期母子医療センターの、外来棟六階に設置されたCell Processing Facilityが2021年2月にCAR(Chi-meric Antigen Re-ceptor)導入T細胞療法実施施設の、2021年6月に慈恵大学病院が東京都大動脈スパーネットワーク重点病院の認定を受けました。これらの施設認定により質の高い周産期医療、難治性白血病・リンパ腫に対する細胞治療の実施が可能になり、解離性大動脈瘤に関しては都内の基幹病院の一つになりました。

3.おわりに
 4病院はCOVID-19流行下において民間初の慈善病院である慈恵大学の理念である社会貢献を果たすとともに患者さんのニーズに基づく医療を実践してきました。今後、With/After COVID-19を見据えた医療を構築してまいります。同窓の先生方におかれまして引き続き慈恵大学附属4病院をご支援くださいますようよろしくお願い申し上げます。

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