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東京慈恵医科大学同窓会

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2021年11月25日 第138回成医会総会パネルディスカッション
「慈恵医大における産学連携・大学発ベンチャー」


 なぜ今、大学発ベンチャーなのか? このパネルディスカッションが始まる前の私なりの答えはこうだ。「大学の経営収益は、国からの交付金を除くと、圧倒的に多いのは附属病院収入。医科大学である本学はその依存度が一層強い。今回のコロナ禍による病院収入の急激な減少はその体質の弱点を浮き彫りにし、医療収入以外の安定した収入(例えば研究関連収益)を増加させることが慈恵大学の喫緊の課題である。その一つの解決策が大学発ベンチャー。このパネルディスカッションでは、研究による増収のノウハウを解説することになるだろう。」しかし、パネリストたちの話は私の予想を完全に裏切った。しかも良い方向に。
 まず基調講演をされた熊谷巧氏(東北イノベーションキャピタル代表取締役社長)は、数々の大学発ベンチャー設立に関わった経験から、研究成果と実用化・商品化との間にある大きなギャップ(いわゆる“死の谷”)は研究者自らが乗り越えなければならないことを強調された。その後に続く四人のパネリスト、山岸正明教授(京都府立医科大学小児心臓血管外科)、藤田雄講師(呼吸器内科)、横尾隆教授(腎臓・高血圧内科)、村山雄一教授(脳神経外科)は、その“死の谷”をいかに越えてきたか(あるいは越えつつあるか)について、ご自身の壮絶な戦いをときに雄弁にときに淡々と語られた。与えられた30分では到底話し尽くすことはできない苦労があったことは想像に固くない。2時間半を超えるパネルディスカッション終了後、大学発ベンチャーに対する私の考えは180度変わり、金儲けの一つの手段というような甘い考えは見事に吹っ飛んだ。今は、4人の先生方の素晴らしい研究成果が、熊谷氏のようなビジネスに精通した方の導きにより上市され、日本はもとより海外の患者のもとに一刻も早く届けられることを願わずにいられない。松藤千弥学長は、閉会にあたり、大学発ベンチャーという事業を通じて、physician-scientistの熱い思いを全力でサポートする決意を改めて表明された。パネリストの皆様、オンラインで参加してくださった方々に改めて感謝を申し上げる。昨年に引き続き今回もオンライン開催になったこのパネルディスカッションは、12月6日までe-learn-ingを通して視聴可能である。ぜひ多くの方に私が得た感動を共有していただきたいと思う。
(麻酔科学講座担当教授 上園晶一記)

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