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東京慈恵医科大学同窓会

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2022年01月25日 学祖高木兼寛没後100年記念講演会開催される

「建学の精神」の源流を辿る 恩師ウイリアム・ウイリス

 令和3年12月2日、学祖高木兼寛没後100年記念講演会が大学1号館講堂で開催された。本講演会は令和2年秋の予定であったが、コロナ禍によって1年順延となり、創立140周年、大学昇格100周年にも重なるこの年に開催する運びとなったものである。その講師に山崎震一氏をお迎えし、「『建学の精神』の源流を辿る 恩師ウイリアム・ウイリス」と題した講演をお願いした。
 山崎氏は昭和38年に日本医科大学を卒業、同大外科で博士号を取得、昭和47年から千葉県野田で山崎外科内科医院を開業し、現在に至っておられる。医業の傍ら歴史研究に興味を持ち、幕末・維新史に既に著作があるが、2019年「ウイリアム・ウイリス伝」(書籍工房早山)を上梓、初の系統的なウイリス評伝として大きな反響を呼び、多くのメディアに紹介された。その山崎氏から直接お話しをお聞きする機会は大変貴重であり、本記念講演会に相応しく、講堂が満席となるほどの聴衆を集めた。
 講演はウイリスの生い立ちから始まり、戊辰戦争の中で果たした役割に言及した。その中で、ウイリスが政府軍に収容された傷病者に幕府軍兵士がいないことに気付き、敵味方を差別してはいけないと諭し、以後双方の診療にあたったことを紹介された。その姿に居合わせた医師は皆感化され、日本に新たな医療の幕開けを告げる大きな転機となった。薩摩に招かれ、学祖は直接の薫陶を受けることになるが、ウイリスが学祖の能力を愛し、期待をかけたことは、英国留学に物心ともに援助したいとする学祖宛て手紙に伺い知れる。
 実のところ、ウイリスの英国における経歴は、ベルツなど政府招聘外国人医師に比べて地味で、臨床一筋であったことが不遇の一因だったともみられる。しかし、豊かな人間性を背景に、診療にかける熱い情熱を目の当たりにし、学祖はウイリスを本学の理想の医師像としたのではないか。山崎氏の講演は、建学の源流を新たに認識させるものであった。
(東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター長、臨床専任教授 宇都宮一典記)

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