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東京慈恵医科大学同窓会

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2022年04月25日 入学式祝辞
学校法人慈恵大学 理事長 栗原敏


 本日、東京慈恵会医科大学に入学を許可された、医学科105名、看護学科60名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。我々、教職員一同、皆さんを心から歓迎します。
 新入生のご家族、保護者の皆様にも心からお祝い申し上げます。医学・医療の道はたやすいものではありません。ご家族・保護者の皆様には新入生に対する温かいご支援をお願い申し上げます。
 医学科は6年間、看護学科は4年間の課程が始まりますが、新入生の皆さんは、積極的に学ぶという姿勢を大切にして下さい。今日は緊張感をもって入学式に出席していると思いますが、次第に怠惰になり、学業が疎かになる学生が毎年、出てくるのは残念なことです。どうか、常に学ぶという積極的な姿勢を忘れずにこれからの、6年間、あるいは4年間を過ごして下さい。皆さんは医師、医学者、看護師、保健師、あるいは看護学研究者などを目指して、本学の医学科、看護学科に入学されたことと思いますが、医学、医療は命と直接かかわる分野です。そのことを今一度、よく自覚して頂きたいとお願いします。また、医療は自分のためにあるのではなく、病に苦しむ方に手を差し伸べるためにあることを忘れずに研鑽して頂きたいと思います。
 2002年(平成14年)4月16日の朝日新聞の“私の視点”というコラム欄に、元金沢大学附属病院長の川崎一夫先生が、“医学生へー医学を選んだ君に問う”という一文を投稿されました。大変厳しい内容でした。それをご紹介します。医学を学んだことがない君が医学を選んだ理由は何か。奉仕と犠牲の精神はあるか。死に至る病に泣く患者の心に寄り添えるか。そして、医師の知識不足は罪のない患者を死なすことになる。君自身の最愛の人が重病に陥った時に、勉強不足の医師にその命を任せられるか。医師になるということは身震いするほど怖いことなのだ。医学生は良く学び、良く学びしかない。また、インスリンの発見は世界中の多くの糖尿病患者を救い、今後も救い続ける。優れた研究は実に多くの命を救うことができる。研究の喜びも体験したいという強い意志を培って欲しい。心に平安をもたらすのは、富でも名声でもない。人のため世のために役立つ何事かを成し遂げた時に思えるのだ。というものでした。
 川崎先生の言葉は看護学生にも当てはまることでしょう。学長に就任して1年経った私は、先生の一文に感銘を受けたことなどをしたためた手紙をお送りしました。先生からは見ず知らずの私に、お手紙と先生の著作などが送られてきました。
 新入生の皆さんはこの川崎先生の問いにどのように応えるのでしょうか。入学を許可され、安堵し喜びの時を過ごしていることと思いますが、医学、医療に何が求められているのかをよく考えて頂きたいと思います。医学や看護学の専門科目を学ぶとともに、広くいわゆる教養科目も学んで欲しいという思いが、本学独自のカリキュラムに込められていることを理解することが大切です。医学や看護学に直接関係のないものは学びたくないという声をよく聞きますが、それは我儘というものです。
 “病気を診ずして病人を診よ”という建学の精神は、病気そのものを診ることに捉われることなく、患者さんを一人の人として理解し、共感して寄り添い、手を差し伸べることが重要だということを意味しています。本学で学んだ医師や看護師は、深い思いやりと慈愛の心で患者さんに接して欲しいと願っています。これは容易でないことですが、だからこそ、皆さんには、是非、柔軟な心で広く学んで欲しいと願っているのです。水が高いところから低いところに自然に流れていくような柔軟な心と謙虚な態度こそ、物事を学ぶときに求められるものです。
 これからの6年間、あるいは4年間、多くの人との出会いがあることと思います。人は書物から学ぶと共に、人から多くを学びます。現在、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、人と人との出会いや触れ合いが厳しく制限されており、教育や学術活動が大変大きな影響を受けています。対面授業に代わる方法で講義などが行われており、次善の手段として致し方ありません。皆さんは限られた環境の中で学ばなくてはなりませんが、最善でなければ次善の方法で、医学、看護学を修得するという強い気持ちで励んで欲しいと願っています。教職員も最大の支援をすることでしょう。このような環境の中で学ぶことで、これまでとは異なる世界が拓けてくることと思います。
 医学・医療の世界は人に尽くすことができる素晴らしい分野です。皆さんはその入り口に立っていることに感謝し、これから夢と希望に胸を膨らませて研鑽して頂きたいとお願いして祝辞といたします。

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